普段アジアの作品はほとんど見ないのだけど、映画好きの友達に託されて自分ではなかなか選ばない作品を見ているところ。
監督の作品におけるいわゆる「香港3部作」というものの一つだということだ。
知識がないので、この監督のものは『2046』の方を先に見てしまったのだけれど、彼の作品の特徴を理解する上では悪くなかったのかもしれない。
巻き戻したみたいに同じ場面がセリフ違いで続くアレとか、穴に秘密を打ち明ける変態チックなプレイとか、独特の表現が面白い。
『2046』の方は政治的な作品だと感じたのだけれど、こちらはとても個人的な作品のように思えた。
古き良き時代というものがあるのだとしたら、ここに描かれている香港の生活、風俗、社会はそういうものなのだろう。
悲しい物語が描かれているためにメランコリックな雰囲氣が支配しているのだけれど、ここには失われてしまった美しいものが確かにある。
恋人たちの結ばれぬ恋についてはなんと言ってよいのか分からない。良心やためらいやがすれ違いを生み、人生をままならぬものに変えたとしても誰も責められない。
もしもあの時、と後から思っても、過ぎてしまった過去を変えることはできない。
それは時代の歴史に翻弄された香港そのものなのかもしれない。