不在

花様年華の不在のレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
4.0
心の内面としての狭い部屋や店、そしてそこから逃れようとする葛藤。
ウォン・カーウァイの作品には同じイメージが頻出する。
2人の密会は基本的に部屋の中だし、外で会うシーンも鉄格子の中にいるように撮られ、とにかく閉塞感や圧迫感が漂う。
ラストのアンコールワットのシーンで観客が奇妙な解放感を覚えるのは、これまでの狭くて薄暗い"部屋"から脱し、外の世界へ新たに産まれることを示唆しているからだ。
子供を連れて、部屋の外へ出ていく夫人にも同じことが言える。

そして何より1966年といえば文化大革命だ。
ありとあらゆる破壊が始まり、ここから全てが変わってしまう節目の年。
ようやく灯った火も消されてしまうだろう。
不在

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