ちびたん

花様年華のちびたんのレビュー・感想・評価

花様年華(2000年製作の映画)
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なんて上品で切ないんだろう。こんな上品な映画初めて観た。

・映画を見る前は、ポスターのイメージからこの作品は「赤」がメインの物語だと思っていた。そのため、序盤がほぼ緑の映像で驚いた。こんなに緑がかっているのはどうして?と不思議だった。しかし、スーが赤いコートを羽織ってホテルに向かった瞬間、「緑」と「赤」の意味が分かったような気がして、ハッとした。ずっと死んだような顔をしてた彼女が、赤いコートを着て急いでホテルに向かう姿は、とても生き生きしていて、ちょっと可愛らしかった。「緑」があったおかげで、赤いコート、ホテルの色、カーテンの赤もより強く頭に残る。「赤」がこの映画のテーマカラーになるのも納得した。

・2人はお互い「好き」や「愛している」とは一言も発しない。でも、突然降る雨、赤いカーテンの閃き、チャウとスーの立ち姿と鏡越しの目線など、風景と2人の仕草で、彼らの気持ちが読み取れる。その表し方がとても上品だった。

・映画内で、チャウとスーのパートナーの顔は一切映らない。その構図のおかげで、彼らに「目の前にいるのに、掴めない人」という印象を抱いた。スーが浮気を問い詰める場面、相手の顔が見えないから、当初は旦那に向かって話していると思った。だが、チャウの顔が見えた瞬間「あ、トニーレオンか」と安心感を抱いた。つまり、顔が見え、目を見て話しているからチャウには安心感がある。でも、スーの旦那にはない。それは、彼が顔を一切見せないからであり、そのおかげでスーが感じているような、パートナーに対して、「目の前にいるが実在しない」といった不安定な印象を抱くのだと思った。

・昔ってこんなに電話を使っていたんだーと驚き。チャット使ってたら、こんなすれ違い起きないよね。