ベテラン中学生

ソラニンのベテラン中学生のネタバレレビュー・内容・結末

ソラニン(2010年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

ASIAN KUNG-FU GENERATIONが好きなのでずっと観ようとは思ってたものの機会がなくて初めて観ました。

なんか本格派の映画を2日連続で観てたので、日本の商業映画として必要なクリシェとか紋切りがあってそれが鼻についてしまった。

クリシェとか紋切りの範囲内でよくできてるかどうか、みたいな評価軸も当然あるんだろうけど映画初心者なのでその辺はよくわからない。テーマ自体が「青春が終わってすぐ」みたいな感じで今の自分に合ってるような合ってないようなだけど、その視点がそもそも、本当はないコンプレックスを紋切りのストーリーが生み出してきた「歴史的」なものという気もする。

原作を読んでない(浅野いにお作品はおやすみプンプンとデッドデッドデーモンズ~は読んでるのでどうせなら近いうちに全部まとめて読みたい)ので、どこまでが原作にあった仕掛けでどこが映画での工夫なのかわからないけど、

①まず、身近に似た境遇の人がいる身としては、そんなアホみたいに人間は死を乗り越えないだろう、という感想がまずあって、もちろん桐谷健太と宮崎あおいたちが病むシーンとか泣きながら自転車に乗るシーンはあるんだけど、演奏しました、一応終わりました、ちゃんちゃん、という描きかたになってるのはそれで良いのか……?という感じがぬぐいきれない。でもそれは商業として成り立たせる上で仕方ないのかもしれなくて、うーん……という感じ。

②序盤にジャガイモを積み重ねるシーン→途中彼氏が死んでジャガイモの芽が伸びまくるくだり→最後、「ソラニン」というタイトルの意味が明かされて「空」とのダブルミーニングとわかるくだり

の流れはよくできてて(おー)と思った。

③桐谷健太が単純バカだけど実はいいやつキャラなの、話の流れ上そのキャラがいると便利なのはわかるけどうざかった。

④宮崎あおいと高良健吾は美女すぎ&かっこよすぎで最高。朝方に二人が別の方向を向いてるのに二人とも目をあけてるシーンとか、寝ぼけた高良が宮崎を抱き寄せてキスするシーンとかうおーってなった。途中で宮崎あおいが高良に説教するシーンで(いや、お前が説教せずに音楽やれよ、)と思ったら後のボートのシーンでちゃんとそれが回収されてて、あっ俺は掌で踊ってたのか……となった。

逆に高良健吾が事故に遭う直前に「本当に幸せ?」みたいのが黒地に字幕で出るシーンとか、ベランダに引っ掛かった風船を取り逃がしてしまうシーンとかはくそしょうもない気がした。似たような仕掛けで顔が×(バッテン)になってるウサギのキーホルダーのくだりとか、海岸で花火するくだりとかは悪くないと思う。

⑤なんか、宮崎あおいはあくまでもバンドマン3人の友達で、最終的に付き合う、っていう「女の子」でそれがもやもやした。最後に演奏するのもあくまで(女の子なのにボーカルギターやっちゃいました)の図式でしかない。そもそも自分が無邪気に(うおー)と思ってきたいわゆる「ロック」がじつは女の子を疎外して(ガールズバンド呼ばわりしてみたり、あるいはアイドル化させてしまったり)きたことを実感させられるのはつらいものがある。

⑥彼氏がそのうち死んで代わりに演奏する、ってのは予備知識で知ってたから死ぬシーンがいつくるかビビってたけどショッキングな描き方じゃなかったからホッとした。

⑦あと、途中で色んな曲を主人公のバンドが練習するけど、アジカンが曲つけてる「ソラニン」以外の(音楽会社が作ったであろう)曲の出来があきらかにソラニンを二個ぐらい下回ってて、わざとなんやろうけどやっぱりソラニンっていい曲なんだなと思った。アジカンのボーカル本人はあんまり気に入ってないらしいけど、アジカン自体は持ってない映画の物語が一個乗ってることで特別な曲になっててたまらないものがある。それでいうとアジカン版のバケモノボーカルを聴き慣れてるので宮崎あおいの声質は微妙。

⑧アジカンが好きすぎるあまり、映画の内容よりエンドロールで流れる「ムスタング」でガチ感動してしまった。トータルすると、映画自体は絶賛するほどではないかな……。曲と宮崎あおいと高良健吾は最高。