豚

前橋ヴィジュアル系の豚のレビュー・感想・評価

前橋ヴィジュアル系(2011年製作の映画)
3.0
群馬県前橋市で活動するヴィジュアル系バンドのボーカルが、農業とバンド活動の狭間で思い悩むコメディ。
元ジャニーズJr.の風間俊介主演ということで身構えたけど、意外と演技は悪くない。
また劇中で実際にライブシーンもあり歌声を披露するんだけれど、そこそこV系っぽい声質なのも良かった。
ただこのバンド、V系というよりは見た目含めてBREAKERZみたいなポップ・ロック寄りのような……?

まったく成功の芽が出ないバンド、徐々に突き付けられる就職という現実、家族との確執などなど、非常に等身大かつこじんまりとした脚本で、よくも悪くもこちらの想像を大きく超えてはこない。
ただ「BECK」と違ってボーカルは歌声を一切誤魔化すことなく最後まで歌いきってくれるので、そこは好感を持った。
曲も結構良い。
ダイアモンドユカイやマーティーフリードマンもチョイ役で登場。

昔バンドで、もしくは今バンドで苦労したという人間が観ると、無性に応援したくなってしまうこと間違いなし。
メンバー間の温度差、お金がない、家族からの冷たい目、上がらない人気、見えない将来、「俺、辞めるわ」……一体何のためにバンドをやっているのか、続ければ続けるほどバンドというものが分からなくなっていく主人公を観て、思わず自分を重ね合わせてしまった。
田舎ならではの描写として、倉庫をスタジオ代わりに使っているシーンがあり、「本物のガレージロックじゃん!!」とどうでもいいところで興奮。
個人的にパンクバンドのボーカルの憑依っぷりが凄く好き。
ライブ中の"いかにも"なカメラワークが、ライブシーンをそのまま使うインディーズ系PVそのまんまで面白かった。

基本的にはファン向けな内容ですが、前述したようにバンド経験ある方が観るとまた一味違って楽しい作品です。
ただ撮影がビデオなのかな……?
ちょっと画面が安っぽいのが気になりました。
歌に関してはなかなか頑張っていますが、エンディングでheidi.が流れた瞬間やっぱ本物のアーティストは違うなぁと思ってしまい、ちょっとかわいそうでした。

V系は地方愛や地方らしさがよくクローズアップされるジャンルではあったけれど、今もそうなんだろうか。
故郷を愛する気持ちはどんなものであれ、とても大切で素晴らしい。
豚