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KAMIKAZE TAXIのtntnのレビュー・感想・評価

KAMIKAZE TAXI(1995年製作の映画)
4.2
癖の強い主人公達がパンチラインを吐きまくりながら、銃と金だけ持って日本中を旅するロードムービー。
それでいて、いわゆる「タランティーノ的」おふざけや戯けは一切なく、物語の根底には日本という国、ひいては世界全体の「責任の所在がない暴力」への憤りが漂い、映像は常に情感が溢れている。
これが、北野武とも石井隆とも黒沢清とも違う原田眞人映画なのか。

権力を持った人間が、弱者を搾取する構造に「大義名分」を押し付けて正当化する欺瞞。しかも、これは軍隊や革命、職場、ヤクザなど形を変えて世界各地に残り続けている。
この現状に憤りを感じながらも、一庶民にできることは暴力や殺人といった「窮鼠猫を噛む」的手段でしかないという視点(実は、ミッキー・カーチス扮するアニマルや政治家の会長でさえ、紋切り型の悪役ではない)。
この負の連鎖から離れた一瞬の安息として、寒竹さんは笛を吹き続けるし、温泉での3人の無邪気な戯れが愛おしい。
ラストで吹く「KAMIKAZE」は、作り手なりのファンタジックな希望にも見えた。
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