しゅう

市街のしゅうのレビュー・感想・評価

市街(1931年製作の映画)
4.1
最近観た中で一番の作品。
ルーベン・マムーリアンは「喝采」の見事な表現形式と演出技法に感銘を受けた事があるが、今作では更にその技法を洗練発展させている。
映画や映像の演出を勉強したい人は絶対に観るべき。

海岸に激しく打ち寄せる波が次第に穏やかになる描写はナンとキッドの口論と和解に同調、クーリーとアグネスの物騒な会話には白と黒の猫の置物が二人の狡猾さを象徴していたりと印象に残るだけでなくフォトジェニックな魅力もある。
ラストの山道での猛スピードの疾走から、「悪く思うなよ」との名台詞を残して2人が新しいスタートを切る爽やかな解放感は夜明けの空に舞う鳥の群れのインサートにより一段と清々しい印象を強める。

同時期に作られた「民衆の敵」や「暗黒街の顔役」が出世欲に取り憑かれて、のし上がるが悲惨な最期を迎えるストーリーだったのに対して今作は同じ世界を題材にしながら組織から抜け出していく若者のストーリーである事も好もしい。
ゲーリー・クーパーもシルヴィア・シドニーも好演。
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