トシオ88

花を喰う蟲のトシオ88のレビュー・感想・評価

花を喰う蟲(1967年製作の映画)
4.0
ピカレスクロマンというには余りにも毒のある映画。すっかり魅了された。黒岩重吾の原作を、後のロマンポルノの巨匠、若き西村昭五郎が描くと、エロもグロも悪も何もかもカオスになって、スクリーンに踊る。
特に主役の太地喜和子の体当たり演技が凄まじい。また社会人の顔を持ちながら、サイコなアナーキストぶりを発揮する二谷英明も、いつもの甘い二枚目の容貌のまま、毒に満ちた悪辣ぶりを存分に発揮するギャップが堪らない。
横浜のズベ公だった太地喜和子演じる奈美が、二谷英明演じる香本に見出され、みるみるうちに変貌を遂げて羽ばたき、周囲を壊していくさまは、「マイフェアレディ」が華やかさが彩るコインの表面の蝶だとすると、ダーティで汚穢に満ちた本作はまさにコインの裏面に焼き付けられて鱗粉を撒き散らす毒蛾。昭和42年当時で既に18歳未満鑑賞禁止の作品だった理由もポルノライクな内容ばかりではなかったのではと思う。
そして映画を常に彩るアドリブに満ちたjazzの伴奏が緊張感を、更にまた掻き立てる。
まだ梶芽衣子が太田雅子の名前だった頃の演技も楽しめる。清純派だった筈のお嬢様役が、あっという間に堕ちていく演出は最早、映画会社のコントロールも逸脱していたのでは、と想像。
刺激的な作品だった☠️😃🎬。

因みに、ボンボンの息子役は、後にリュート物質で京都の寺を燃やす花ノ本寿、騙されて不動産を搾取される男に、青い血の女を飼っていた名優浜村純…何故か後の「怪奇大作戦」の名作の名脇役も本作で顔を合わせています😃
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