ザフーのオリジナルアルバム版「トミー」が骨太なロックオペラであるおかげで映画化されてもミュージカルとして普通に楽しめる…どころか全編楽曲で構成された映画史に残る傑作になっている。
さらに、映像としてこの物語を体感することでオリジナルの楽曲群の理解も容易にし、ザフーのアルバム自体の解像度を上げられるようになり、評価をさらに高めることにも成功している。
また、これは私が「ザ・シャウト」を観た後に今作を観たこともあるが、ストーリーも割とストレートで荒唐無稽な感じはしなかったし、なによりキャストが豪華でエリッククラプトン、エルトンジョン、ティナターナーはもちろん楽しいし、ジャックニコルソンまで歌っちゃうんだから退屈するはずがない。
エルトンジョンによる「ピンボールの魔術師」シーンは60年代ロックシーンではお馴染みの楽器破壊も見られ、完璧な仕上がり。ここだけでも観る価値あり。
ピンボール名人から成り上がっていくアルバム譲りの設定は奇抜で興味を持続させているし、マリリンモンロー崇拝の宗教、アルバム「セルアウト」からの流れである途中のビーンズCMも気が利いている。
ラストのホリデーキャンプで発売されていた「トミー」のレコードが信奉者によってピンボール台とともに粉々に破壊されるシーンが印象的。