極黒の女子中学生

Tommy/トミーの極黒の女子中学生のネタバレレビュー・内容・結末

Tommy/トミー(1975年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

ザ・フーのロック・オペラのアルバム曲を映像化した映画『トミー』は、初見だと休む暇なく襲い来る画面の暴力の数々に驚かされる。

とある事件をきっかけに視覚・聴覚・言語を失ったトミーを元に戻す為、インチキ宗教へお祈りをしに行かされたり、アシッド・クイーンを名乗る謎の女に麻薬を打ち込まれるなど、序盤はショッキングなシーンが続く。
インチキ宗教が崇めるマリリン・モンロー似の巨大人形や、アシッド・クイーンが用意したアイアン・メイデン風の像など、胡散臭い美術セットの造形は味があって好み。
あとショッキングなシーンといえば、トミーのいとこにあたるケヴィンがトミーを容赦なく虐めるシーンは痛ましくて目を背けたくなる。

トミーが神格化後に挟まれるトミーに盲信する少女の物語(Sally Simpson)を見ると、皮肉にもトミーが序盤のインチキ宗教と同じようなことをしていることが明らかになる。


ザ・フーのボーカルであるロジャー・ダルトリーが主人公トミーを演じているが、スタント無しでハング・グライダーに乗ったり、足場の悪い崖を登ったりなど、ミュージシャンとは思えないほど身体を張っていた。

ロジャーも大概だが、トミーの母親を演じたアン・マーグレットも中々に無茶をしている。
トミーが回復しない苛立ちからテレビ画面を割り、そこから大量の泡や缶詰の豆、挙句の果てにはチョコレートをぶっかけられるという、売れっ子女優にあるまじきことを成し遂げていた。
その身体を張ったシーンが印象に残りがちだが、歌唱力の高さにも傾聴してほしい。

終始奇抜なミュージックビデオが続く為、途中で飽きないか不安だったが、トミーと周りの狂った人間たちの結末が気になり、飽きることなく視聴することができた。
シンセサイザーの音がとても耳心地良く、リバイバル上映の機会があれば整った音響で堪能してみたい。