デニロ

人斬り与太 狂犬三兄弟のデニロのレビュー・感想・評価

人斬り与太 狂犬三兄弟(1972年製作の映画)
3.5
何が狂犬三兄弟だか。

『仁義なき戦い』の監督を誰にするかを決める時、脚本を担当した笠原和夫は中島貞夫監督を推したそうだ。結局、深作欣二になったのだが、深作監督が『仁義なき戦い』の直前に撮った本作を観ると、笠原和夫が深作監督に疑念を持つに至ったことが分かる。映像が世間様に阿っていて卑しい。だから作品そのものが浮ついている。狭い範囲の自己陶酔としか感じられない。平たく言うと常識的。

笠原脚本はやくざ映画の名を借りて重層的に戦後日本を活写した中に、女、在日朝鮮人、被差別部落など戦後日本の原罪を描写している。その思想をあの軽い感覚で撮られたらたまらない、と思ったのではなかろうか。

その後の深作監督は徐々に作品の評価云々よりも、映画監督としての権力を絵にかいたように行使した姿が表に出て墜落していく。

1972年製作公開。脚本松田寛夫 、神波史男 。監督深作欣二 。
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