このレビューはネタバレを含みます
その男、止まらない暴力につき、文太、、、
1972年作、脚本神波忠男(他一名)。監督深作欣二。自分指定R-15.
「人斬り与太」を受けて製作された第二弾。
「仁義無き」シリーズ前の前哨個人戦のような任侠暴力映画。
深作監督の任侠映画の中で一番好きな2作品。
前作と本作の素晴らしさは、なんといっても
菅原文太の無軌道、わがままな暴力男の存在感にある。
組織をはみだし、怒り狂うその様に男なら共鳴せざるをえない。
とにかくひどい男
劇中曰く「狂った犬、狂犬」なのだ。
常識を破壊するモラルハザード
アンチモラルな暴力男を菅原文太が激烈に怒りをぶちまけまくる。
そのはみ出した荒くれ、行過ぎた犯罪がとまらない。
文太の「わがまま」は男のやり場の無い暴力そのものを体言している。
あまりにも凄い終盤のグロさ、血糊多量のため覚悟必須、ご注意ねがいます。
親分殺しの刑をくらい出所する文太。
それをたった一人でむかえる田中邦衛。
彼も文太の熾烈な暴力の弟分。
怒り散らす文太。
彼の親分、内田朝雄の組に出向くが丸くおさめられる。
一方渡辺文雄ひきいる組員との小競り合いが起きていた。
文太は持ち前の常識はずれな犯罪手法でかすりを取り上げる。ゆすり、たかり、強姦、恐喝何でもござれいつの間に稼ぎをつくり二つの島を勝手気ままにかき回す。
そこにある日渚まゆみ扮する無口な女性が娼婦として舞い込む。
そこで荒行とばかりに文太の洗礼。 このシーンの二人の喧嘩シーンは壮絶必見。
いつしか暴力のなかのほのかな「愛」にひかれる渚まゆみ。
ラーメンのチャーシューを仲直りに器に投げる文太。
また文太ファイトシーンの中でも、サシの勝負で文太がやるシーンはベストバウト。
雨の殺傷シーンはとても悲惨なんですが、どこか綺麗です。そこにかぶさる「仁義無き戦い」の津島利章のむせびなくハーモニカ。
そして三兄弟の異色なキモサ、三谷昇兄貴の登場。 賭場に「蛇」を持ち込むイっちゃってる男、ナイフを使い彼も制御がきかないわがもんぶり。
三人はいつしか、両組織にたてつく無秩序な暴力の天秤に揺られながらそれぞれの末路をたどり始める。
組織から破門だろうが
狙われようが
どやされようが
親分から怒号をあびようが、
文太は全力でぶつかり、
叫び、
たてつき、
おのれを傷つけ、
容赦ない暴力をふるう。
内田朝雄との任侠映画恒例の「つめ」のシーンは、激烈必須。
三谷のスプラッターなざま。
田中邦衛の忘れられない小屋の最期、
菅井きんの「ナンミョウホウレンゲイキョウ」の調べ、、
そして文太の映画館での冷たい響き。
当然たる姿。それをみつめる出て行った渚みゆきの 刺すような目線、そして、。
ラストのどうしょうも無い彼女の姿に
グーーっ
とやるせない気持ちが盛り上がる。
悲しみの狂った男の「サガ」に、男の「きったなさ」に、男の「むかつき」に胸が鑑賞後
とても締め付けられる思いに駆られる。
彼の暴力は、男の本能たる闘争本能に火をつける。そして、不思議に胸が救われる。
現実に暴力はあたりまえだがふるえない。だからこそ、彼のクリミナルな暴力に男は感情移入するのではないだろうか?
深作監督の男のとめられない「暴力」衝動を激しくぶちまけた日本男児フィルム、ひどいです。
しかし、たまりません、この男!
リスペクト 深作欣二
追伸
映画館のシーンで深作監督の多分「博徒外人部隊」ポスターがチラッと写る。
2009年11月ブログ記事より