父母ともに癌

人斬り与太 狂犬三兄弟の父母ともに癌のレビュー・感想・評価

人斬り与太 狂犬三兄弟(1972年製作の映画)
4.1
暴力的な快楽主義者のヤクザが暴走していくうち、皆から鼻つまみ者として扱われるようになり、突っ走るところまで突っ走ってしまう話。

面白かった。
破滅型の菅原文太が腰ぎんちゃくの田中邦衛とサイコパス用心棒の三谷昇と共に隠れ売春宿を経営して、女どもを無茶苦茶酷い目にあわせたりする。
もう酷い。
文太は拉致してきた田舎娘を強姦して、そのあと、自分のぶんの出前のチャーシューを田舎娘に分けてやる。田舎娘は「あ、この人優しいかも」って思う。なんか文太のところに居付いてしまう、とかはもう、女性蔑視表現だなあ、とすら思う。往時のモラルを垣間見ることができる。ああいう女、いるんだろうけど。

悪いやつが改心できずに落ちていくことしかできないこと、を主題にした映画に宿るこの快感って一体なんなんだろう。
むき出しの欲望の終着点は死しかないってわかるのに、人を襲って、脅して、殺して自らも死んでいくという生き様といううより死にざま。死へと直滑降していく感じ。
田中邦衛と三谷昇は文太を助けるでも無く、巻き込まれるというでもなく、ほかに寄る辺無く文太に寄り添っていたら巻き添えを食って死んでいく感じ。この圧倒的虚無感。生きていりゃあ無駄だし、死んでも誰も悲しまない。でも人間なんて結局そんなもんなんじゃないか、と思うと勇気が湧いてくる気もする。
そんな人間なんか結局そんなもんなんじゃないか、ということを主人公である文太も、そてに寄り添う二人もわかっていて快楽に走る他生きる理由がなく、我慢するということをせずに快楽と衝動に生きているんだろうと思う。
三人で300万の借金をどうにかしてやりに行くシーンはそういう心根の三人が欲望の為に結託してチームで戦うので、妙な高揚感がある。

人間に価値なんてないし、人生に生きる価値なんてないってことをよくよくわからせてくれる映画。面白かった。
父母ともに癌

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