Omizu

ブロードウェイのダニー・ローズのOmizuのレビュー・感想・評価

3.9
【第57回アカデミー賞 監督賞、脚本賞ノミネート】
ウディ・アレンのモノクロコメディ。ブロードウェイの売れない芸人たちを愛を込めて描き、英国アカデミー賞ではオリジナル脚本賞を受賞した。

ウディ・アレン演じるお人好しな芸能マネージャーのダニー・ローズが、ミア・ファロー演じる歌手の愛人ティナの世話を頼まれたことから騒動に巻き込まれる。

ストレートに楽しいコメディ!ウディ・アレンが演じた役の中で一番素直に見られたかも。アレンの演じる役はいつもイライラさせられることが多くて。

場末のダイナーみたいなところで芸人?マネージャー?たちがだべっているところから。始めと終わりを彼らで挟むという構造自体にすごく愛を感じる。

ダニー・ローズのキャラがいい。売れない芸人しか抱えていないけど悲観視せずお人好しなダニー。おしゃべりなのはいつも通りだけど、今回のギャグはけっこう笑えた。

歌手の愛人ティナの世話をするだけだと思っていたらティナはイタリア系マフィアの愛人でもあったというヤバさ。知らず知らずのうちに自分がティナの浮気相手に勘違いされていくのが可哀そうだけど面白い。

そしてボスの弟二人がママの命令を受けてダニー・ローズの命を狙う。マザコンなイタリア系マフィアというステレオタイプではあるけど本当におかしくて笑っちゃう。

終盤のダニー・ローズの哀愁とティナの後悔、この描き方が秀逸だった。少しは落ち込むけどやっぱりお人好し。入院費を払ってあげて自宅でささやかなパーティーを開くダニー。占い師に頼るのをやめ、自分でダニーに会いに行こうとするティナ。

少しの出会いでお互い忘れられない彼らは…とても暖かい終わり方だった。そのあとの語り手たちの会話もよかった。ダニーのパーティーに行きたいと言いあう。軽口をたたきつつもダニーが愛されているのが分かる。

ヘリウムをつかったこてこてのギャグシーンが面白すぎた。さりげなく出てきたものがその後の伏線になっていたりと、軽い演出にみえてほんとに上手い。観客の呼吸や視線をよく理解していないとここまで緻密な脚本は書けないと思う。

愛すべきコメディであり、ウディ・アレンの愛が伝わるステキな作品だった。
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