ベビーパウダー山崎

ブロードウェイのダニー・ローズのベビーパウダー山崎のレビュー・感想・評価

3.5
ミア・ファローが、神経症でビクビクしている内気な女性とは正反対の勝ち気で派手な娼婦のような役柄を珍しく演じていて、ウディ・アレン映画でのファローとしてはベスト。最強に脂が乗っていたころのアレン映画で中心を努めたファロー、二人はデタラメに不幸な結末を迎えることにはなるが、本作と『カイロの紫のバラ』あたりはおそらく人類が滅亡しても残るので許してほしい。
生真面目に生き、バカを見てきたお人好しが、どうにか報われる映画。枯れた地に種を蒔き続けて、最後の最後で美しい花が咲くような物語をササっと撮れるアレンの映画的な才能。売れない芸人の面倒をみているマネージャーというより、フリークスを管理しているサーカスの団長のように見せていて、十分な娯楽でありながら「表現」としても勝利しているのは、この異形感がスパイスとして良く効いているから。歪な暗さと軽薄な笑いをドラマに落とし込めるアレンは(小男でロリコンなのに)作家として普通に強い。そして、ゴードン・ウィリスの白黒撮影は鬼。