片腕ファルコン

SHOAH ショアの片腕ファルコンのレビュー・感想・評価

SHOAH ショア(1985年製作の映画)
3.2
僕の前に立ちはだかっていて強大な壁映画、それは『ショア』
これまでは見る手段もほとんどなかったが今年つにリバイバル上映がなされた。
が、しかし迂闊に手が出せる代物じゃない。

昨日から公開された話題作は『ハッピーアワー』も317分という恐ろしい長尺だがこちとら570分じゃい!9時半じゃい!!

テレクラキャノンボール10時間バージョン!?あんなの楽しすぎて体感時間30分じゃないか!(盛ってます)
こちとら体感時間3日間じゃい!(盛ってます)

イメージフォーラムの上映の時も連日満席でオスギもプライベートで鑑賞してたらしい。9時間半オスギの隣だったら嫌だな。拷問だろうな。

今回の早稲田松竹のオールナイトももちろん完売。ピーコは来ていない。

どんな映画かと言えば、第二次世界大戦中、ナチス占領下で実行されたユダヤ人の強制収容、ホロコースト(大量虐殺)の当事者たちのインタビュー集なのである。
当事者とは大量虐殺の中で生き残った数少ないユダヤ人、加害者となる元ナチス、傍観者となる現地ポーランド人の3種類。
この一箇所からの視点でないちゃんそれぞれのインタビューをとっている構成はドキュメンタリーとしてすごく成立してます。素晴らしいと思います。

しかも制作時は戦後から35年~40年ほどしかたっていないのでまだ寿命的な意味合いでも生存者がたくさんいた頃だ。貴重な映像資料でしょう。

間に通訳を介するんですね。。ここ…うまくやれば、3時間くらい短縮できるんじゃ…いえ、何でもありません。こういう通訳を待つ時間も当事者の表情が伺えてよろしいじゃありませんか。。

やっぱり印象的なのは生き残ったユダヤ人でしょうか。

1人は当時13歳の少年で素晴らしい歌声の持ち主だった事からドイツ人達の手元に置かれドイツの歌をたくさん歌わされたらしい。インタビューには淡々と答えるものの普段は物静かそうでどこか寂しげだ。披露してくれた大人になったその歌声も寂しげ。

もうひとりのユダヤ人は終始笑顔でインタビューに応えていて、監督が笑顔の理由を尋ねると「泣けとでも?」と、やはり笑顔で答える。何だか 泣きながら当時の体験を語られるよりずっと重みがあるような気がしましたよ。きっとこの人も僕らには到底分からない恐ろしい体験をして自然と笑顔をデフォルトにしておかないと崩壊してしまうのではないか…そんな風に捉えられました。。

ナチス側が語ってた当時の虐殺の様子。ほとんどがガスによる虐殺で。その死体の山の下に血と人糞とウジ虫の湖が自然にできて、誰も片付けようとせずユダヤ人を使って処理しようとしても、それなら銃殺を選択するほど悲惨な光景だった…的なエピソードが強烈でした。。当たり前ですけど、どの話も生々しい。
監督さんは疑い深いのか、「トラックは何台!?」「トラックは何色!?」と細かくツッこんでくるのも印象的でした。

とまぁそんな感じの話を9時間半するワケですよ。
本当に貴重な映像集ですけど9時間半の対価として合ってるかと言われると正直どうだろうって思います。

こんな事言ったら監督さんに悪いですがコレをさらに誰かが2時間半くらいにまとめてくれた方が作品として世に出しやすい、敷居を低くしてみんなが見てもらえるんじゃないか、と勝手に思いましたよ。それくらい9時間半はあまりにも長すぎましたよ。。

斜め向かいの人が9時間半ずっとお菓子食べ続けてたのにも驚きましたよ!