Osamu

SHOAH ショアのOsamuのレビュー・感想・評価

SHOAH ショア(1985年製作の映画)
4.0
観た者に人間の怖ろしさを刻み込む映画。

「SHOAH」はヘブライ語で「破局」や「絶滅」を意味するそうです。

ナチスが行なったユダヤ人に対する絶滅政策に関わった人たちの証言を集めたドキュメンタリー。

この映画の意義は、悲惨な歴史を多角的で膨大な量の証言により記録したことですが、特に次の二点を明らかにしたことに意義を感じます。

①ジェノサイドの現場で行われていたことの詳細
②現場周辺の人たちの態度

①については、いかに効率的にユダヤ人を「処理」するかに神経を使っていたことが印象的でした。また、同胞のユダヤ人をガス室に導き死体を焼却炉に運ぶ役目を負わされたゾンダーコマンドが、収容所に送り込まれたユダヤ人たちの中に知り合いを見つけた時の話が怖ろしかったです。これから殺されることを伝えるべきか伝えないべきか…。

②に関して感じることが僕は多かったです。

もともとユダヤ人が多く住んでいた町の住民のポーランド人たちの話を聞いているときに違和感を感じました。身近で起きた狂った出来事に対してどこか他人事で、ユダヤ人に対する侮蔑のようなものを感じたのです。とても怖ろしいと思いました。

ユダヤ人を移送する鉄道の管理をする仕事をしていたドイツ人が、収容所で起きていたことを知らなかったと言い張りますが、そういうのに一番苛立ちを感じます。知らなかったとごまかす感覚が、悲劇を大きくしているような気がするのです。

彼らの発言に違和感を感じ、苛立ちましたが、彼らの中に自分自身の姿を見た気がします。その時その場所に自分がその立場にいたら、同じことをしたのではないでしょうか。

ジェノサイドは人間の本性が起こすものに違いありません。我々はその本性を自覚し、その本性の正体を理解しなければ、狂った出来事を繰り返してしまうのだと思います。

間違えなく、全人類が観るべき映画。

567分の大作を5回くらいに分けて観ました。時間的にもしんどかったですが、内容的にもかなりしんどいものでした。これを劇場で全編通しでご覧になった方を尊敬します。

厳選映画配信サイトBeautiesにて視聴。
https://beautiesweb.com/
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