horahuki

フューリーのhorahukiのレビュー・感想・評価

フューリー(1978年製作の映画)
4.2
我々の文化にあの子達の居場所はない

めちゃくちゃ面白い!!周囲によって虐げられている者を主軸に据え、不条理にとことん追い詰める物語はいつものデパルマ。原作や脚本が別にいるとはいえ『キャリー』と同じく望まずして手に入れてしまったサイキック能力のために苦しみを強いられる遣る瀬無い展開が共通していて、どちらにしても惹きつけられるものがあるな〜って思った。

『キャリー』のように直接的にサイキックを追い詰めていく描写があるわけではないけど、「我々の文化は同化しない者を滅ぼす」と作中で語られるように特殊すぎる故に居場所がどこにも存在しないということが冒頭から執拗に語られ、それでもこの世界で生きようとしがみつくが故に、悪意を持った罠として提供される偽りの「居場所」に引き寄せられ貶められていくのが救いなさ過ぎて辛い。

本作は、強力なサイキック能力を持つ息子を秘密組織に連れ去られてしまった元諜報部員の父親が、息子を取り戻すためにサイコメトリー能力のあるサイキック少女の協力を得つつ秘密組織に喧嘩を売るというお話なんだけど、冒頭で息子が連れ去られるまでの二転三転する見せ方がめちゃくちゃ上手い。親子の双方に対する愛情・信頼の強さを一瞬で提示し、抱える不安と包み込むような優しさからそれに代わって現れる危機までを席の離脱・着席を持ってカメラを左右に振りながらの長回しで予見させてしまう異常なうまさにゾクゾクした。

的確なタイミングの涙、一度挫いてからの巻き返しで希望と絶望どちらに転ぶかを完全に予測不可能にした上での主観カメラ。何であれだけの尺でこれだけ自然に感情とスリルを盛り込めるのかがわかんない。凄すぎる!カーチェイスひとつとっても、ガンガンスピード出した迫力のあるものではなく、ゆっくりとつけられてるだけなのにビシビシ伝わってくる緊張感。濃い霧の中の逆転と目に見えない何かと戦うような撹乱というシリアスな演出の中にも小ネタのように笑いを仕込み、コントのようなオチを持ってくるセンスが本当凄い。笑いをオチとして締めるシークエンスが全体的に多いのが、暗く救いのない物語を絶妙なバランスで見やすくしてるのがめちゃ丁寧。

クライマックスの爆発もいつものデパルマだけど、攪拌器のような無慈悲な回転の中にも血が飛び散るワンカットを挟むことで残虐性を効果的に上乗せしたり、上と下に分かれた対面が既に存在する場所・立場が違っていることを決定的に印象付けたりと、ちょっとしたことに気を使ってるのが良くわかる。

原作を読んでないから細かな設定部分はわかんないけど、職業的に2人とも親の愛情を十分に受けられていないことが窺えるし、仕事を辞めてその埋め合わせを一生懸命に取り組んでいたであろう主人公に突きつけられる結末には胸が痛くなる。でもその辺りはサイキックジャンルの定石通りでもあるわけで、更には自分が属していない価値観を持つ集団に対して「優しさ」を持つことの大切さを訴える物語としても響いてくるのが良かった。

今日休みやったんで年賀状書こうと思ってたんだけど、結局めんどくさくてサボっちゃった…。そろそろ書かなヤバい!
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