桃子

ガス燈の桃子のレビュー・感想・評価

ガス燈(1944年製作の映画)
4.7
「心理的虐待」 

原作はパトリック・ハミルトンが書いた戯曲で、1940年にイギリスで最初の映画化がされている。こちらも是非見てみたい!ハミルトンはヒッチコックの「ロープ」の原作者でもある。優秀なサスペンスを書いていた作家だったんだなあ。素晴らしい!!
昔、1度見たことがあったのだけれど、例によってすっかり内容は忘却の彼方にすっ飛んでいた。でも断片だけがちらほらと残っていて、お屋敷の中などはなんとなく見覚えがあった。
ストーリーは圧巻である。ヒッチコックとはまた違う雰囲気のサスペンスで、ラスト近くで一気に盛り上がる。どんでん返しとまではいかないけれど、思わず「よくやった!!」と叫んでしまうような胸のすく展開が待っていた。ヒロインのポーラを演じたイングリッド・バーグマンがアカデミー賞主演女優賞を受賞したのは納得がいく。
シャルル・ボワイエ演じる、ポーラの夫のグレゴリーは、最初に登場した時から思い切りアヤシイ。おいおい、こんな妙な男にひっかかって、結婚までしちゃって大丈夫?状態である。案の定、ポーラはグレゴリーの心理的なハラスメントに遭い、だんだん精神状態がおかしくなっていく。グレゴリーのやり方は、卑怯で汚くて容赦がない。すべてが計画的犯行なので、本当にたちが悪い。サスペンスに登場する悪役としては最高レベルのイヤな奴である。
時代設定は1880年ごろのようだ。ポーラのファッションに目が行った。後側の高い位置がふんわりとふくらんだスカート、平たい帽子、フリルたっぷりの日傘など、メリーポピンズみたいでとても可愛い。
メイドのナンシーを演じているのはアンジェラ・ランズベリーである。撮影当時17歳で、これが映画デビューだったという。とても17歳には見えない。今風に言うと、ちょっとヤンキーな感じの娘で、ふてぶてしい態度がインパクト大である。彼女は現在94歳。御存命というのにびっくりした。「ジェシカおばさんの事件簿」は未見なので見たくなってしまった。
キャメロン警部補を演じているのはジョセフ・コットンである。ヒッチコックの「疑惑の影」ではチャーリーおじさんを演じていた。あのアヤシクて悪いチャーリーおじさんが、こちらの映画では犯人を追いつめる役である。映画って、ほんと~~に面白い!
ガス燈はオレンジ色の炎がゆらゆらと揺れて、とてもロマンティックな灯りのようである。ロンドンにはまだガス燈が並ぶ通りが残っているそうだ。1度はこの目で見てみたい。ハリー・ポッターの世界みたいなんだろうなあ…
ガス燈はロマンティックだが、言葉はなかなかシビアである。Wikiにはこんなことが書いてあった。「この作品(特に1944年の米国版映画)の内容から、1970年代後半以降『ガスライティング』が心理的虐待を表す用語として使われるようになった」 ということはつまり「私、夫にガスライティングされてるのよ」なんていう風に使うのだろうか?
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