Automne

ハロルドとモード/少年は虹を渡るのAutomneのレビュー・感想・評価

3.4
劇版がめちゃくちゃ良かったので映画っぽい体をなしているドラマ作品。
ところどころ良さそうなシーンは登場する。
お墓とか、海とか、花火とか、車に乗るのとか、良いショットと音楽の組み合わせは成立しているのに案外乗れなくて、どうしてだろう?ってなってしまう。なんか私の受容態度が悪いのか、感覚がずれてるのか、それとも今のコンディションのせいなのか。

これはなんでなんだろうと考えたときに、現実からは目を背けているし、犯罪めちゃくちゃ起こしてるし、周囲の人間は誰も幸せになってないし、なのになぜかふたりは社会的には困っておらず、警察もゆるく決して捕まりもしないというご都合的なところが多少見えすぎたのが原因かもしれないと思った。彼ら自身エゴが強すぎるというか、強欲というか…周囲の存在や恵まれた環境の上に自分達が存在していることを知らない。結構セリフで良さっぽいことを言ったりする割にね。家族や土地を見捨てて個人ひとりだけの人生を生きる、みたいなのが新しい時代だったのかな。その辺のぱっぱらぱー加減はぶっ飛んでて良い部分もあったのだけど。

逃避するほどハロルドが傷ついているのが見えなかった(父の死も、母親の存在も叔父の存在もないものになってしまってる)のと、モードがあくまで母親の代理としての存在でしかないので恋愛って感じには没入できなかった。どっちかというと父親の死がきっかけで母親とコミュニケーションができていないというトラウマを、モードおばあちゃんのほうに投影して逃げているだけなのにそれを正当化してしまっているのが見ててきつかった。しかも毒親ってよりも、コミュニケーションこそできていないけど、心理カウンセラーとか用意したり、富豪の家なのでいろんなものを与えたり、息子のことはちょっとおかしいけど変化していって欲しいと願っているまだ理解あるほうの母親だったのでこれまた報われなくて可哀想。

こんなに多動的で溌剌なカップルいたら最高だなと思うんだけど、モードの歳であれくらい何も変わってないのは流石に人間として成長してなさすぎ、というか周りにイエスマン固めて養われてぬくぬく育ったらああなりそう、というようなくらいのリアリティで、そこに人間としての重みがない。良い意味で言うとふたりとも苦労を知らなすぎるというべきか。たぶんそこに葛藤がないのだ。最後まで、報われなかった感情の痛々しい露出にしかなっていない。

でももしかしたら、小学生中学生くらいの、社会的に養われ自由を享受していながらも悪さはしたい、みたいな比較的わがままかつ自由かつ何をやっても許される年齢のときに見たら、もうちょっとばかりは共感してたのかもしれない。

『さらば青春の光』もそうだったけど、70年代って崖から何かしらに乗って飛び降りるのがブームだったのかしら。
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