消費者

クロールスペースの消費者のレビュー・感想・評価

クロールスペース(1986年製作の映画)
3.4
・ジャンル
サイコホラー

・感想
美女だけを受け入れる元医師であるアパートの大家が覗き魔殺人鬼だった!という内容
元ネタは“殺人ホテル”のオーナーをしていた実在のシリアルキラー、H.H.ホームズことハーマン・ウェブスター・マジェット
彼についての詳細はこの動画でまとめられている
https://youtu.be/NtpcCZtRigA?si=b190KoKn3iB6o-FG

実在のシリアルキラーが元とはなっているものの、犯行動機や人物像など改変されている部分が多い
なので殺人ピエロ、“ポゴ”として知られたジョン・ウェイン・ゲイシーが「IT/イット」のペニーワイズになり、“死の家具職人”ことエド・ゲインが「悪魔のいけにえ」のレザーフェイスになったのと同列の物と思った方が良い感じ

美女を集めてその命を手中に握り頃合いを見て殺害するアパートの大家という設定
元は安楽死を専門的に行なっていた医師で父はナチスの収容所における拷問器具の設計責任者の息子という人物像
これらはなかなか面白いし、演じたクラウス・キンスキーの芝居も絶妙な気持ち悪さで悪くない
それだけに勿体無い作品だなぁ、と

まずアパートという閉鎖された環境で頭脳派のシリアルキラーが暗躍する、という話なんだからもっと殺人に焦点を当てて欲しかった
劇中で殺人その物の描写は針を仕込んだ椅子によるアナル貫通(流血無し)くらいで他は全て既に遺体となった状態でしか見られないというのはちょっと…
どうせなら巧妙に殺人を重ねていき、1人また1人と姿を消していく展開の方が色々と活かせたと思う
結果として罠のバリエーションも少ないし殺害方法も大半が不明で終わっていたし…
序盤から登場する舌を抜かれた被害者、マーサの存在や彼女に手記を書きながら過去を語っていく場面がおどろおどろしくて期待させる物だっただけに尚更
‘86年の作品なら既にスラッシャー映画は数多く存在していただろうしクラシックな雰囲気をあくまで守るにしてもせめてジャッロくらいのゴア描写はあっても良かったんじゃないかな…
殺人描写をほぼしないにしても元医師という設定なんだから拷問や死体処理などがあればまだ違ったはず

加えて殺害以前に覗きの仕方も簡易的過ぎて住人達も物音を耳にしながらも気付かないので段々と同じ描写に飽きてくる
時代的にカメラくらい使った方がまだリアリティがあるんだよなぁ…
展開も遅いし…

あとは肝心な所として美女が標的なのにエロがソフト過ぎた
せめておっぱいくらいは見せるべきだったと思うし濡れ場もあるけど全然ちゃんと映されないという…
かといって覗き魔の視線を生々しく描く様なカメラワークや演出があるかというとそういう訳でもない
住人達の生死を支配している恐ろしさがもっと表現されてればそれでも良かったんだけど…

結局ただでさえ元ネタのホテルからアパートに舞台のスケールが縮小しているのに試行錯誤が全体的に感じられないんだよな…
大家と住人という距離の近さを上手く気持ち悪い会話劇に発展させていたらカバー出来たろうに…

他にも終盤の化粧の謎とかも引っかかったけどそれも含めて大家のキモさに頼り過ぎという感じ(役者本人がゴリゴリのペドだった様なのでガチのそれが滲み出ていた可能性も…w)
事あるごとにロシアンルーレットで自らの運命を試していたのがローリに射殺されるという形で幕を閉じたのとかは良かったけどそれもより凶行の本質に迫っていたらもっと後味悪く出来ていたんじゃないかと考えてしまったり…
「ハイル・ガンサー!」のシーンとかもそれでこそ滑稽さと狂気をより濃く感じられただろうなぁ…

残念な部分ばかり指摘してきちゃったけど空気感とかは好きだったし今、もっと洗練された形でリメイクしたら普通に名作になりそうな気がした
消費者

消費者