フリッツ・ラング監督作を求めて。
ずっと観たいと思っていた「M」がアマプラ無料配信で観られると教えて頂いて、喜び勇んで鑑賞したら…。
アマプラの字幕、酷ッッ!!
Google翻訳、それ以下の以下。
余程日本語に不自由なドイツ人が訳したらしい。
例えばこんな感じ。
"あなたは不潔な豚です"
"置いて!私は行く!"
"雌犬の息子!置いて!"
マジで狂った翻訳ッッ!!
不潔な豚と雌犬の息子は笑ったが。今度誰かを罵る時に使いたい。
ドイツ語を聞き、目から飛び込むクソ字幕がノイズになりながらも、それを脳内で正しい日本語訳に変換しながら鑑賞。忙しいわ!!
気を取り直してレビューを。
フリッツ・ラング監督初のトーキー作品としても知られ、サイコスリラー映画の始祖として高く評価されている本作。
1930年代のベルリンで、幼女ばかりを狙った連続殺人事件が発生。警察当局の懸命な捜査にも関わらず犯人の見当は全くつかず、これを機に暗黒街の面々は独自で犯人探しを開始する。浮浪者や娼婦まで動員し、市民総出で憎き殺人鬼を追う—— 。
憎き殺人鬼、と書きながら、殺人犯ハンス・ベッケルトを演じるはピーター・ローレ。
このずんぐりむっくりの体型とくりくりのお目目は…「海底二万哩」の教授の助手役の人やんかー!!どうにも憎めない、愛嬌すら感じるルックスに、終盤市民に詰め寄られる姿は気の毒にすら思える…。
室内の1人1人にカメラのフォーカスを当てながら奥まで進み、2階の別の部屋を窓越しに捉えて、更に窓から奥に(部屋に入り込んで)撮っていく長回し。この時代にどうやって撮影したんだろう。
全編モノクロで描き出す光と闇。
転がるボール。
電線に引っかかる風船。
また1人、少女が犠牲になったのだと悟らせる。何気ないものを映し出して、観客の想像を膨らませる演出も上手い。
チョークで「M」(ドイツ語で殺人者を意味する「Mörder」の頭文字)のマークを付けられた男ハンス・ベッケルトは、徐々に追い詰められていく。
警察だけではなく、市民を敵に回した代償は大きく、終盤に繰り広げられる人民裁判のシーンの熱量が凄まじい。
頭を抱え、叫び続けるピーター・ローレの熱演と汗が光る。
人が人を裁くという事。
考察し甲斐のあるテーマなのに、トンデモ字幕の所為でいまいち頭に入って来ない。
嗚呼!!
私は観たい!!
正しい字幕で。
正しい言語で。
もう一度観たいのです。
字幕を付けた人!!
不潔な豚!!雌犬の息子!!
早速罵ってみた。
正しい字幕なら、もっとこの世界観に没入出来たに違いない。それでも中身は流石の一言。傑作です。