こ

Mのこのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
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トーキーになってかえって静けさと物音とが際立った。少しの物音も気になるようにできていて、神経質な印象があってサスペンスらしい緊張感がある。誰か特定の人に焦点が当たることは少なくて、誘拐された女児の母親と犯人とかくらいしか、注目するようには写されない。自警団の団長は物語の流れ的に、『戦争と平和』の最後に出てくる、船の先頭に起こる波みたいに群衆に先行する形でだけ描かれている印象。個人にではなくて人の群れに焦点が当たっているのは、基本無音の中で人が立てる物音が強調されているのもあって、アリの巣の観察みたいにより広い全体の関連を手際よく見られている感じがして気持ちよかった。物音もなくすことで、最後の黙った人の群れの場面では迫力も動かない人の壁が圧迫感を出してた。正直、群衆が暴走する展開には少し飽きてたけど、アリの巣観察の視点だと新鮮に見えてくる。後半部の皆で犯人を追い詰める場面と犯人が「他に仕方がなかったんだ!」の内容を叫ぶところは、もう少しさりげなくなってくれると個人的には好き。最後は事務処理的に犯人を処罰する展開だとよかった。
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