Jun

MのJunのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
4.0
フリッツ・ラング監督初のトーキー映画ということで「音」に着目してみると、Murdererである犯人が少女を殺害する前兆として吹かれる口笛はこの上なく秀逸な仕掛けだと言える。加えてモノクロの画の上では光と影が効果的に用いられており、少女に忍び寄る男の影が非常に不気味に映る。また殺人犯によってもたらされる恐怖よりも、地下室で開かれる人民裁判の際に露わとなる民衆の異様な熱気が恐ろしく、人の根底に潜む感情が炙り出されている。無声映画の名残とも考えられるが、誇張された表情と演技がより狂気を増長している。サイコスリラー映画の始祖にして傑作。
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