ハマジン

Mのハマジンのレビュー・感想・評価

M(1931年製作の映画)
4.5
幼女連続殺人のニュースを読む市民の声が、該当の画面より1つ前のカットにかぶさるよう周到に編集がなされていて、不安とともに情報を拡散させるのがなにより「声」であることを、シンプルかつ的確に描いてる。サイレントでは決してできなかったトーキーならではの「音」の表現方法。殺人鬼の正体に最初に気付くのが、男の口笛を聞き分けた「盲目」の風船売り、というのも示唆的。
ラングの他作品同様「円形」のモチーフが執拗に繰り返され、それが殺人鬼の男(ペーター・ローレ)の欲望を刺激しつつ、同時に彼を徐々に追い詰めていくことになるのだけど(そもそもペーター・ローレ自体が複数の球体の組み合わせで出来てるような俳優なので、同じ「円」のイメージに惹かれるのも映画的に必然)、対して犠牲となる少女たちは、ポスターや菱形の鏡の「四角」いフレーム内にとらえられる瞬間殺人鬼に目を付けられ、最終的に「行方不明者の写真」として四角い枠の中に閉じ込められる、という対照になっている。女の子の持っていたボールが草むらから転がり出て、風船がゆら~……と不自然な動きで電信柱から離れるショットの恐ろしさは格別。
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