天豆てんまめ

十三人の刺客の天豆てんまめのレビュー・感想・評価

十三人の刺客(2010年製作の映画)
3.8
三池崇史監督ほど、作品によって完成度に落差がある監督は珍しい。テラフォーマーズのあまりの厳しさが記憶に新しいけれど、十三人の刺客は残虐性があまりあるものの、映画全編に渡って気合に満ちていて、役者陣の鬼気迫る表情から、泥臭く壮絶な活劇アクションと、時代劇調に抑えた映像美含め、近年の三池作品では一番完成度の高い作品と言えると思う。

クライマックスのノンストップ怒涛の激闘では、相変わらずのどっしりとしたリーダー感の役所広司を初めに、山田孝之、伊勢谷友介、伊原剛志といった錚々たるメンツが見せ場を存分に魅せてくれるのが嬉しい。そして、今年1月に亡くなられた松方弘樹の流石、別格の殺陣の格好良さと鋭い目つきが心に残る。

ただこの作品で一番驚かされたのは、最凶の暴君を演じた稲垣吾郎の突き抜けた壊れっぷりだと思う。新境地に挑んだこの時の存在感は、他の名優たちに全く引けを取らなかった。ジャニーズ事務所を離れた彼の今後の可能性は、この作品の狂気性に宿っているかもしれない。センスある映画眼を持っている彼には、何の躊躇も縛りも無く新たなる役柄で、ガツンと驚かせてほしい。