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十三人の刺客の東京キネマのネタバレレビュー・内容・結末

十三人の刺客(2010年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

松方さん追悼21本目。予習はバッチリしといたもんで、楽しく比較鑑賞させてもらいました。全体的に言えば、旧作に比べ本作の方が遥かにまとまりよくなってますね。娯楽作品として十分堪能できます。さすが三池崇史ですね。

特に良かったのは、弘化元年(1844年)の話だということから明確にキックオフしているところ。この10年後に黒船騒ぎですから、恐らくこの当時、徳川幕府の経年変化による構造疲労は限界に達していた筈、という前提は大正解です。しかしね、“侍として良き死に場所を探しておりました”という島田新左衛門(役所広司)の言葉だと私事過ぎて、「国家万民のため」という趣旨がどうしてもボケてしまう気がするのですよ。前作池上金男脚本の“侍として良く死にましょう”は印象的な言葉でね。この状況のままではダメだ。でも時代が変わったら変わったで侍の生きる場所はなくなってしまうだろう。だから、生きる場所のない私たちが今死んで世間に問いましょう、が旧作の本意なんです。だから、エンドでちゃんと島田新六郎(山田孝之)が生き残ることによって完結する、というところに繋がるんです。

序でにいえば、松平斉韶(稲垣吾郎)にしても、あれほど戯画化する必要があるのかなあと思うんですよ。これじゃタダの気印ですよ。だって、こんなあり得ない人物設定にしちゃうと、殿様個人の変態性の話になっちゃう訳で、この時代の葛藤じゃなくなっちゃいますからね。あくまでこの当時の幕府体制のメルクマールになってることに意味がある訳ですから。

それとね、前作との比較で言えば、全体的に本作の方が良いことは前提ながら、圧倒的に旧作に負けていると感じるのは役者なんです。倉永左平太(松方弘樹)と松平斉韶(稲垣吾郎)だけですかね、今回勝ってると思えるのは。それ以外は全て前作のキャスティングの方がいいです。恐らく時代に合わせてキャラクターの設計を修正していることもあるとは思うのですけど、特に亀頭半兵衛(内田良平)や平山九十郎(西村晃)はあのキャラクターあってのストーリーになってますからね。

それにしても、これだけ一流と称される役者を集めても、特に光っているのが東映プロパーの松方さんとスマップというのも、皮肉というんでしょうか、日本映画の貧しさというんでしょうか、なんかちょっと悲しくなる話でもあります。はっきり言えば、死に方が昔の役者に比べて下手なんですよ。この映画、死に様コンテストになっているところも見所な訳ですから、死に様をキッチリ見せることでこの時代特有の緊張感を実感してもらうことにも意味がある訳でね。だから、そういった意味でも松方さんの討ち死には印象的で良かったのですよ。なんかこの世に最後のお別れ(現実も含め)をしているようにも見えてね。。。
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