ねまる

十三人の刺客のねまるのネタバレレビュー・内容・結末

十三人の刺客(2010年製作の映画)
3.9

このレビューはネタバレを含みます

正義の集団で、数では圧倒的に劣る相手と戦う時、
誰が一番の親玉を殺す=killerになるか
誰が生き残る=survivorになるのか
が鍵になってくると思うんですよね。

killer及びsurvivorは同じことも、
survivorが誰もいないことも、
survivorが複数いることもあるんですが。

killerは役所広司でした。
これから来る世の中のため、打って出た大博打。物語の主人公である新左衛門が、賭けに勝って親玉を倒すのはしっくりでした。

自らの正義ではなく、老中に依頼されて悪を成敗するというのも武士らしく、
稲垣吾郎が同情の余地が1mmもないサイコパスを演じていることで、
スカッとした勧善懲悪になっていると思います。

一方で、同じく武士として、主君のために命をかけて戦わなきゃいけない市村正親は切なくて、彼を殺すのも役所広司じゃなきゃいけないと感じました。

survivorは2人いました。
不死身の伊勢谷友介はというと、
武士ではありません。
武士は滅びようと生き延びていく者。としてのサプライズsurvivorでしたね。

武士というものをカッコよくも、滅びていく者として、冷淡に描いているとさえ感じさせます。

もう1人のsurvivor山田孝之は、
死にたかったと思うんですよ。
生きている実感すら湧かず、賭け事をしている時にだけ、生きていると感じる。
叔父の大博打に乗って、武士として死んだら本望。
奥さんのもとにもお盆に帰ろう。

死体が倒れる道をただ1人、なぜ生き残ってしまったのだろうと歩く姿。
でも、背後から襲われた時、その侍を斬る。命を賭けた大博打によって、生きたいという思いが自分の中にあるんだと気付いて、奥さんのもとに生きて戻る。

死に場所を探していた侍が、1人の人間として生きて戻るラストは、なんだか素敵でしたね。山田孝之の笑みに尽きる。


伊原剛志(地面に刺さっている刀を斬っては新しいものを掴みってばっさばさ切っていく姿超かっこいい)、
窪田正孝(伊原さんとのコンビも、初めて本当に人を殺める若さがいい)、
古田新太(13人もいるから短い背景描写でもキャラ立ちしてる)、
沢村一樹(仲間を逃がす囮になるため、振り返って立ち向かうシーン最高)、
松方弘樹(強い、強すぎる。かっこよすぎる立ち姿。敵いません、ベテラン!)
その他諸々(すまん)
武士としての散り様の格好良さに関してもみんな文句の言いようがない。

その前に散った、内野聖陽、松本幸四郎の切腹シーンも圧巻。

大義のために死ぬ格好良さは何度も見せつけられているからこそ、
この話がsurvivorがいるラストで良かったと思う。
ねまる

ねまる