【スラップスティック死体アニメ】
1912年の、ストップモーション・アニメの古典ですが、出自は異様…。
スタレーヴィチ監督は元々、博物館の館長で、昆虫の記録映像など撮っていたそう。そしてアニメに興味を持ち、実際の昆虫を使って撮りはじめる(Wiki英語版)。つまり、死体の再利用!動かす足の部分はワイヤー等で作り、本体は乾燥標本をそのまま使っていたらしい。
今の感覚だとゾッとするが、日本でも昭和の昔なら、子供が夏休みの課題で昆虫標本なんて普通に作っていたものね。捕まえた虫を薬品で殺して。時代のなせる技であります。
物語がまた、スゲ!カブトムシ夫婦がそれぞれ不倫して、横恋慕から逆襲される話。で、カブト夫婦は同種だが、他はトンボなどの異種。人間でいえば獣姦みたいなもんでしょコレ。
死体使って獣姦撮ってる!デヴィッド・リンチあたりが大喜びしそうなお膳立て!
技術的には当然、稚拙。しかし妙に強く、残る映画なのは、こういう事情からではと。
あと、今では驚きなのが、極めてオーソドックスなサイレント・コメディなんだけど、チャップリンやキートンが登場する前に作られているってこと。時期的にはキーストン・コップがウケ出した頃ですかね。
当時のロシア事情は知らないですが、死体のパペットアニメで、こんなスラップスティック・コメディ、しかも妙に黒いヤツ…を撮っちゃうなんて当時、実は斬新だったのでは?
そういえばゾンビの伝承に、ヴードゥーの魔術で死体を動かし使役するって話もありましたが…それを映画で、ホントに実践しちゃったのが本作ってコトか!?
ちなみにタイトルのマンというのはウソ。まさに“バッタもん”なタイトルでありますね。
<2023.5.5記>