愛すべきジョン・カーニーによる音楽映画3部作の1作目。
舞台は移民が増加傾向にあるアイルランドのダブリン。
ストリートミュージシャンの男は、彼の演奏に惹かれたチェコ移民の女と知り合い、ピアノが弾けるという彼女にセッションを持ちかける。
交わるはずのない2人が音楽を通じて互いに心を通わせていく過程がとてもいいです。
製作費はたかだか15万ドル。全米2館の公開からスタートしたにも関わらず、口コミが広がり140館まで拡大した本作。
いかにも超低予算な画に、ぎこちない出演陣の演技。もちろん有名人が出てるわけでもありません。
それなのにここまで成功した理由は、映画の随所に深く刻まれるジョン・カーニーの音楽愛に他ならない。
世の中に数多く存在する音楽映画の中でも、やはりジョン・カーニーの作品からは音楽を信じる純粋でまっすぐな想いが伝わってくる。
彼が描くのはいつだって至って平凡な主人公。良くあるサクセスストーリーに仕上げてない点に好感が持てるし、その月並みさがとにかくリアル。
どんなに実力があっても誰もが成功できる訳ではないし、現実とはなかなかシビアなもの。
それでも音楽を通じて、それぞれが抱えるやるせない日常の中に「希望」や「輝き」を見出していく空気感がとても優しくて、監督の理想が感じられます。
音楽が持つ魔法。このテーマは3作品すべてに共通していますね。
余談ですが、この作品を観るとなぜかいつもエド・シーランのGalway Girlを思い出してしまう。
アイルランドだからだと思うけど、夜の石畳だったり、いい感じのパブだったり、ダブリンって良いなーって感じる。
アイリッシュ愛を感じる素敵なフィルム。