継

パンと植木鉢の継のレビュー・感想・評価

パンと植木鉢(1996年製作の映画)
5.0
映画監督モフセンの家を訪ねる強面(こわもて)な男。
応対する幼い娘に, 自分は(当時17歳だった)モフセンに刺された元警官だと名乗る。
(復讐?)と思うも束の間, 男は意外な訪問の理由を明かす。。

英題『A Moment of Innocence』.
1996年製, 漸く手に入れたフランス+イラン合作映画.
実際に警官を刺す事件を起こし, イスラム革命成功まで4年半の牢獄生活を送ったというモフセン・マフマルバフ監督作品です。


🍞🌼
本作は自身の体験を映画化しようとする “映画作りの顛末” を通じて, 再構築しようとした過去の事件が, 刺した側・刺された側双方の主観と思惑によって虚実入り乱れ, 更に二人を演じる青年の内なる葛藤と渾然一体となって涙とスリルを生み, やがて “映画の魔法” によって事件そのものが変容するさまを, 時にユーモアを交えながら描いていきます。

前々から観たかった映画ですが, 想像してたより入り組んだ話で, こじんまりとしていて, 政治性は前面に出ず(そのクセ,強烈なメッセージは孕んでいるけれど), のんびりしてクラシカルなんだけどモダンな作り。思いのほか肩ひじ張らずに観られる映画でした。


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監督と警官役の青年をオーディションで選ぶ所から始まる映画作り。事件のリアリティを出す為か, モフセンと警官は自身を演じる青年と組んで各々2つのチームに分かれて事件シーンまで交わらずに演技指導をしていくというのがミソ。

それまでと真逆の過激な演技指導へ戸惑い,
夢見る平和な世界とかけ離れた役どころを強いられて葛藤する‥,
ふたりの青年が一発勝負の本番で咄嗟に選ぶものー。

クライマックスとなるバザールの,「あの描写」で終える事が最初は腑に落ちなかったんですが, 言わんとする事が全て託されているものと咀嚼しました。
甘いと言えばそれまでだけど, これが実体験を経て撮られたものであることが逆にその願いの切実さを物語るようにも思えて,
少女のチャドル🧕を背景とするカットがそれをクローズ・アップするかのよう。観ることが叶って嬉しい限りです(^^)。
継