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クイズ・ショウのkomoのレビュー・感想・評価

クイズ・ショウ(1994年製作の映画)
4.1
1950年代、アメリカの人気クイズ番組『21(トゥエンティワン)』で勝ち進んでいるユダヤ人のハービー(ジョン・タトゥーロ)という男がいた。しかしTV局側は、華やかさに欠けるハービーに不満を抱いていた。
番組プロデューサーは『21』をもっと面白みのある演出にさせるべく、容姿端麗の白人男性・チャールズ(レイフ・ファインズ)を新たな番組スターに成り代わらせようとする。チャールズがハービーに必ず勝てるよう八百長を仕掛けようとするが、それがのちに裁判沙汰の事件へと発展してゆく。


【嘘をつかないという幻想】

理不尽な世の仕組みに胸が痛みますが、俳優陣の冴え渡るお芝居に充足した気分になりました。
TV番組における『やらせ』は日本でも度々話題になっていますが、本作の舞台は1950年代。
その当時、『TVが嘘をつく』などとは誰も思っていなかったようです。
そういった人々とメディアとの距離、背景と変遷を知ることができたのは非常に有益でした。
若き日のレイフ・ファインズ、甘いマスクで眼福です。

TV局側が、出演者の人間性を踏み躙るようなことをしてはいけないのは勿論ですが、視聴者である我々が出演者に何を求めるかによって局側が行動を決めるケースもあるのだと思います。
視聴者が出演者の陥落を願ったとしたら、局もそういう展開へと運んでゆく。
TVというものは、観る者の心を映す鏡であるとも言えます。

そもそもメディアというものが見せているのは全体の中のほんの一部でしかなく、たとえ真摯な企画であってもそれは変わらないと思います。
切り取られた世界の中で、自分が何を信じるか。
たとえ良識のある番組だらけになったとしても、その点は視聴者にとっての永遠の課題です。
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