マヒロ

クイズ・ショウのマヒロのレビュー・感想・評価

クイズ・ショウ(1994年製作の映画)
4.0
1950年代に人気を博した一般人同士が対決するクイズ番組『21』で、破格の強さで連勝を重ねていたステンペル(ジョン・タトゥーロ)だったが、その地味な見た目にスポンサーが難色を示し降板させるよう指示される。番組のプロデューサーは、著名な詩人の父や大学教授の親戚を持ち、自身も教養のある白人の若者・チャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)を後任に見据え、ステンペルにわざと問題をミスするようやらせを持ちかける……というお話。

番組のために人種や容姿を平然と値踏みしてコマのように扱う冷酷さと、そんなテレビによってもたらされる金と名声に狂わされる人々という、テレビ業界の闇とも言える側面を描いている。
理不尽な理由で番組を降ろされてしまったステンペルはもちろん、やらせに加担することになったチャールズも根っからの悪人という訳ではなく、テレビというメディアからの誘惑にちょっと揺らいでしまっただけではあるんだけど、どちらもたかがクイズ番組の都合だけで結果的に人生が大きく狂ってしまっているというのが恐ろしい。これは50年代の話だけど、素人が出てくるテレビ番組なんて今でもあるし、それで悲惨な事件が起こったことも記憶に新しいし、エンタメに消費されてしまう人々という問題は未だに根深いものなのかも。

チャールズを演じる若きレイフ・ファインズは赤いほっぺがいかにもお坊ちゃんという感じでハマり役だが、あの『シンドラーのリスト』で鬼畜人間を演じた少し後の映画であるというのが結構驚き。あっちでは腹の突き出た中年親父という感じの佇まいだったので、まるで別人のように感じる。
役者周りで言うと、クイズ番組のスポンサー会社の役員としてマーティン・スコセッシが出てきて、ちょい役かと思いきや結構ガッツリ物語に関わっていたのにビックリ。ロバート・レッドフォードとスコセッシのタッグってあんまり印象に無いが、交流があったりしたんだろうか。

題材自体はド派手なスキャンダルという訳ではないが、大きな力に翻弄される人々という普遍的なテーマを堅実に分かりやすく描いていて、シンプルにクオリティの高い作品だと思った。


(2022.43)
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