sonozy

ベルリン・アレクサンダー広場のsonozyのレビュー・感想・評価

5.0
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの超大作TVシリーズ。全14話 約15時間、なんとか見終えました。

ドイツがナチ体制へなだれ込んでいく直前の時代。
1928年から1929年の1年間、ベルリンの下層労働者フランツ・ビーバーコップ(ギュンター・ランプレヒト)の破滅の物語。

恋人イーダの殺人罪で4年の刑期(短くない?)を終えたフランツ。
当初は不安から行き場を失い、娼婦と寝ようとしても上手くいかずだが、イーダの妹ミンナを突然訪ね、無理矢理関係を持ってから元気を取り戻すという、1話目からゲス野郎全開。

口では、堅気になると言いつつ、あれこれ仕事はするものの長続きせず酒に溺れる。
孤独を感じたり、イーダ殺害の記憶に苦しまれている様子も見せるものの、女への対応を見ればイーダの二の舞いがいつ起きてもおかしくないキャラ。

それでも、なぜか彼を助ける人や女に恵まれてる男。
間借りさせてくれるバウマン、旧友メック、常連の酒場の店主マックス。
イーダに激昂し殴り殺した部屋のやたら世話好きな家主のバースト夫人に受け入れられるし(このおばちゃん、イーダの殺害現場にもいたり、とにかくフランツに寄り添いすぎ。笑)
イーダの前の彼女エヴァ(ハンナ・シグラ)は今もフランツを愛していて、事あるごとに駆けつける。さらに後半には、驚きの展開も。

印象に残る役どころは以下の3人。
出所後の最初の彼女リナが紹介する叔父リューダース。フランツは彼の靴紐売り(訪問販売)を手伝うことになるが、未亡人の客の件でリューダースがやらかして以降、フランツは酒に溺れ始める。

バーで気になりフランツが声をかけた男ラインホルト。彼は中盤以降、フランツの運命を左右する重要な役どころ。
こそ泥の元締めプムスの一味のクセ者で、熱を上げた女にすぐ飽きてしまうという悩みを抱え、飽きるとフランツに横流し?するという不思議な関係からスタートし、フランツはこそ泥の見張り役をすることになる。

そして、8話に登場するのが、エヴァがフランツの恋人にと連れてくる、天使のような無償の愛に溢れたミーチェ(本名はエミーリエ)。ある事件で右腕を失ったフランツを働かせたくないと、パトロンを見つけフランツを養い、フランツから暴力を振るわれても、愛し続ける。

だが、ラインホルトへの複雑な心情と、幸せなはずのミーチェにも不満を爆発させるフランツには、悲劇と破滅が待っていた。。

本シリーズ最大の見どころとなるのが14話「ファスビンダー: フランツ・ビーバーコップの夢についての私の夢」と題されたエピローグ。
二人の守護天使に付き添われ現れるフランツ、そして登場人物の数々、ラインホルトの過去の秘密、フランツのラインホルトへの思い、精神病院、地獄のような幻想世界、そしてフランツの最期と再生。

ファスビンダーが少年時代に、原作のアルフレート・デーブリーンの同名小説と出会った時、この小説には自分のすべてがあると感じ、フランツもラインホルトもミーチェもファスビンダーの分身だと語ったという本作。その蠢くような世界に引き込まれました。
sonozy

sonozy