あんず

そして、私たちは愛に帰るのあんずのレビュー・感想・評価

そして、私たちは愛に帰る(2007年製作の映画)
3.8
明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。

新年1本目は、録画していた作品からあまり考えずにチョイスしてしまったら、かなり重かった。

2007年の作品なのに、子どもの頃に観た洋画のフィルムの色合いに似ているような気がして懐かしかった。洋画を観ているという気分に浸れた。

ドイツとトルコを舞台に偶然の出会いから人生が思いもよらぬ方向に変わって行く3つの家族のお話。偶然というと、先日観た『偶然と想像』を思い出すが、あちらはライトでこちらはヘビーな感じ。偶然の出会いから命を落としたり、殺人犯(やその家族)となってしまったり、政治的な活動をすることになったり……

改めて考えると、人生において、特に人との出会いは偶然による所がほとんどだと思った。自分が出会いたいと思って出会えた人なんて、なかなかいない。生まれて来る家なんて選びようもなく、偶然クラスや部活が同じになった子と友達になり、合コンは意図的だけど偶然そこに来た人と付き合い……究極的には、人間としてこの時代に生まれて来たことも偶然という名の奇跡だ。そう、偶然と奇跡は、後にどう受け取るかによって決まる紙一重なものなのかもしれない。

トルコ人の父親の女性に対する態度が気持ち悪くて最低で、新年早々げんなりしたけれど、そんな父親だって息子に対する愛情は深い。ドイツ人とトルコ人の母親が出て来るが、どちらも娘に対する愛情が深くて、その深さゆえに悲劇に向かってしまう部分もあったけれど、「罪を憎んで人を憎まず」とはこういうことを言うのかなと感動させられるラスト。

人を許すというのは、頭で考えて理解出来るものではなく、感覚的に出来ることなのかもしれないなー。ラストの海のシーンにかけて言うなら「海容」という言葉がこの映画のテーマとして当てはまるかもしれない。
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