木野エルゴ

暗黒街/若き英雄(ヒーロー)伝説の木野エルゴのレビュー・感想・評価

2.4
18世紀に実在したらしい伝説のギャング馬永貞をモデルにした任侠アクション。

大旱魃と戦乱により混乱に陥っていた山東省から、夢と仕事を追って上海に流れてきた馬大祥と馬永貞の兄弟。当時上海はイギリスに租借地として支配されており、華やかな繁栄の影には闇の世界が広がっていた。そこではイギリスをバックに持つ譚四と、地元警察と繋がりのある楊双の二大勢力が水面下で勢力争いを繰り広げていた。若く血気盛んな馬永貞は謀らずもギャング同士の抗争に巻き込まれていく…

馬永貞がどんな人物か調べようにも英語版のWikiにすら記事がないので分からないけど、だいぶ脚色されて娯楽色の強い作品になってる。どのシーンもとにかく人が多い。最初の山東から列車に乗るシーンも、ダンスホールのシーンも、要所要所に入る格闘シーンも人だらけで三密どころの騒ぎじゃない。

そんな人集りのアクションシーンは、迫力を出す為にシークエンスの整合性をほとんど無視したような撮り方になっている。これは欧米系のアクション作品との決定的な違いだと思う。格闘技の美しさと、大胆なカメラワークと、大量の火薬と屍山血河の惨状。スプラッタかと勘違いするくらい何度も刺されてるのに全然死なない主人公と二大ギャングのトップ。やり過ぎてシリアスなのに笑えてくる。

ストーリーは任侠ドラマの王道、成り上がりと裏切りと復讐と仁義の詰め合わせ。コメディパートもふんだんに盛り込まれていて、ユン・ワー演じる馬永貞の兄と、ジェシカ・シュアン演じるヒロインのキム、この作品の監督でもあるコリー・ユン演じるキムの叔父さんのポーの掛け合いはずっと面白い。

金城武のコロコロ変わる表情と体当たりのアクションは見どころ。あと譚四役のユン・ピョウの冷静沈着なボスがめっちゃカッコいい。

色々詰め込み過ぎて冗長になってる感はあるけど、懐かしい香港アクション映画の特徴が全て詰まったような良い作品だと思う。
木野エルゴ

木野エルゴ