イチロヲ

薮の中の黒猫のイチロヲのレビュー・感想・評価

薮の中の黒猫(1968年製作の映画)
3.5
野武士への怨恨を抱えたままで怪猫に变化した中年女(乙羽信子)と若い娘(太地喜和子)が、妖怪退治を命じられた武士(中村吉右衛門)と遭遇する。平安時代を舞台にして、武士政権がもたらした混沌状態を描いている、サスペンス・ホラー。

怪異ハンターなどと呼ばれている源頼光(佐藤慶)が、保身のために妖怪退治をでっち上げている主導者として登場。「現場を見ずに指示だけしてくる上司」のように描写されており、現場の事情(=本物の怪異)を知る主人公武士との衝突劇が繰り広げられる。

全体的に「登場人物の反応が鈍い」という、新藤兼人特有のぼんやりムードが出ている。妖怪の風貌が自分の家族と瓜二つなことに気づいても、母親似の妖怪が切り取られた片腕を取り戻しに来ても、危機感がないままで、何だかポヤポヤしている。

その一方で、「相手が妖怪でもいいからセックスしまくりたい!」という貪欲さがストレートに滲み出ている点は好印象。平安維持のための武家政権にクエスチョンを叩きつける姿勢にも好感が持てる。
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