山本薩夫監督が下山事件をモチーフにしたというハードな謀略ドラマ。在日問題や南北朝鮮問題や日韓問題や日米安保問題や防共問題に容赦なくズバズバ切り込んでゆく、結構ヤバめの諜報ドラマ。登場するスパイも、バンバン拳銃をぶっ放したりなどしない、派手なアクションとかもしない、妙ちくりんな武器を持ってたりもしない、地に足の着いた現実味溢れる男。傑作。
ただし、北朝鮮は多くの人が万景峰号に乗って渡っていった「地上の楽園」で、韓国は朴正熙大統領の下で民主化運動の弾圧や言論統制が行われていた「軍事独裁国家」だった、すなわち、今とはイメージが真逆であった時代の作品だということを肝に銘じておかないと、色々と読み違えてしまうので注意が必要。
