Yuzo

ネバダ・スミスのYuzoのレビュー・感想・評価

ネバダ・スミス(1966年製作の映画)
5.0
米西部劇において私怨の復讐劇というのは良しとしないところだが、若き主人公の成長譚にもなっていて、ラストシーンはただ仇を取るカタルシスで終わらせていない。全編を通して風景が美しく、話の構成も良く、上質感のある西部劇だと思う。

さて、スティーブ・マックイーンだが、さんざん指摘を受ける年齢の設定はともかく、ネイティブ・アメリカンとの混血というのは違和感がない。マックイーンも混血アメリカ人顔、猿顔だ。序盤、親を失い家を追われ飢えて放浪するところも彼の生い立ちを考えるとむしろ似つかわしいくらいかもしれない。
彼の細かい自己演出といえば「荒野の七人」の弾を振るのが有名だが、本作でも悪党の手下を殴る時に握力を強めるために石を握っているのがわかる。他にも娼館に潜入する時に窓をそっと指で開けたり、相手の話を聞きながらタバコをきれいに細く巻いたり、テーブルを擦ってマッチを点けたり、一挙手一投足に目が離せないというよりも彼が常に観客の視線を自分から離させまいとしているのだ。
ナイフ使いとの格闘では牛若丸のように柵の上を跳ね回るが、彼の敏捷なイメージにふさわしい印象的なシーンだ。イーストウッドやブロンソンでは無理だろう。握手すると見せかけて相手の腰の銃を奪う動きもワンカットで見事に観せる。
あと、中盤の過酷な沼地の刑務所シーンは西部劇であることを忘れさせるが、ますます画面に溶け込み「パピヨン」を彷彿とさせる。

細身で小顔で猫背で無口で敏捷で何か思い詰めたようなオーラを漂わせここぞという時は圧倒的な行動力を発揮する、そんなマックイーンの魅力は本作にも満載で、まさにファン冥利に尽きる作品なのだ。
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