masayaan

七人の無頼漢のmasayaanのレビュー・感想・評価

七人の無頼漢(1956年製作の映画)
4.4
レンタル屋をぶらぶら巡回していて、はっと息をのんだ。西部劇のコーナーに、あの伝説の『七人の無頼漢』があるではないか・・・いやいやそんなはずはない。西部劇に傾倒し、誰にいいねされる訳でもなく人気のない周縁作を中心に追いかけていた数年前に、どうにかして観ようにも手がなかったカルト的な作品だ。発掘良品と言えど、こうもしれっとレンタル化されるものかね。ありえないだろう。西部劇に似たようなタイトルはつきものだし。が、確かに『七人の無頼漢』と書いてある。どうにもマジらしいネ。

サスペンス、メロドラマ、仁義、復讐、裏切り、そして荒野の決闘・・・・。数年越しの期待を軽やかとかわすように、すべてが予定調和で、西部劇の基本構成そのままだ。それなのに、なんだろう、この面白さは。かつてボキャブラリーが死んで、いくつもの映画を「普通に面白い」と表現していたときの例のアレだ。時折挿入される、意味ありげなロングショットや、荒野でのさよならも言わない別れのシーンに象徴される、妙に凝ったショットに、野心的なものを感じなくもない。が、そこに嫌らしい自意識の気配は全くない。

超人ヒーローがいろいろ頑張る180分の漫画が映画と持て囃される時代に、80分足らずのマイナー西部劇を観る人もアンドレ・バザンの岩波文庫を読む人もいないだろうが、一応、そっち方面の情報を補足しておくと、バザンの『映画とは何か』での西部劇論において、戦後西部劇の「模範」とされた作品でもある。興味があったら読んでいただきたいが、メタ西部劇やポスト西部劇ではなく、あくまでも、素朴な素材を素朴に語るベタ西部劇として、そのまま称賛されている。

つまり、西部劇の稚拙な限界を自覚しつつも、演出家自身が決してそれを自虐しない、という点でメタ的に素晴らしい、という入り組んだ論理なのだが、個人的には西部劇史観がちょっとでも形成される前の、ビギナー状態で鑑賞されることを勧めたい。普通に、面白いから。普通に満足です。
masayaan

masayaan