CANACO

東京島のCANACOのネタバレレビュー・内容・結末

東京島(2010年製作の映画)
1.9

このレビューはネタバレを含みます

2010年公開の篠崎誠監督作品。谷崎潤一郎賞を受賞した桐野夏生さんの同名小説が原作。

第二次世界大戦末期の1945年から1950年にかけて現実に起きた「アナタハンの女王事件」をベースにした物語。実際に“孤島に既婚女性1名(当時22、23歳)とその夫を含む31名の男性が取り残される”異常なシチュエーションが発生。
過酷なこの状況で、動物的生存本能と欲望が剥き出しに。比嘉和子を巡って男たちが争いを始め、彼女の“新しい夫”となった4名はそれぞれ死亡。過労死や行方不明者も多数出て、5年後に救出されたときには19名になっていた(20名説もあり)。この事件はマスコミに派手に取り上げられ、比嘉和子は“男性を狂わせる魔性の女・女王蜂”として世間の耳目を集め大アナタハンブームに。プロマイドが売れ、映画も当時2作製作され、比嘉本人も「アナタハン」という店名でレストランまで開いた。しかし短命で49歳の若さで他界している。

マレーネ・ディートリッヒ主演『嘆きの天使』『モロッコ』(ともに1930)などで知られる巨匠ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督が来日して製作した『アナタハン』(1953)は彼の遺作となった。

事実は小説よりも奇なりを地でいく実話ベース、“適任”桐野夏生原作小説の映画化だが、これが奇跡的につまらない。つまらない理由は、孤島×女性1名×男性多数だから浮き彫りになる「男女の生と性への欲望」の描写をアク抜きして、殺菌消毒までして、ディズニーランドの「魅惑のチキルーム」で流れそうな音楽まで挿入しちゃってるから。なんでエルメスとコラボしちゃったんだろう……。

実話ベースで、1950年代に映画化された作品も……なので、桐野さんは怒らなかったかもしれないけど“これじゃない感”はある。2時間は尺あるのに本来の夫が死ぬまでが秒速級に早く「そこに至るまでの人間ドラマは……!?」とファーストがっかり。でもそれは序の口で、極限状態感ゼロの和やかなやりとりが大半を占め、視聴を何度かやめそうになる。会話のテンポも展開のテンポも遅すぎるんだと思う。ラストも謎で、この話を製作サイドがどう解釈したのかわからないまま終わった。こんな気持ちは久しぶり。

木村多江さんや窪塚洋介さんは嫌いではないけど、「誰がこんな年増に」と女王を罵るのもトレンディドラマのツンデレみたいに見えたりして(『東京島』の清子は43歳の設定)。本物の比嘉和子の発言はたくさん残っているので今も読むことができるけど、もっと生々しく毒々しい。胸糞作品にしてほしかったわけじゃないけど、本当に勿体ない。染谷将太くん、柄本佑くんまでいてこうなる?怨めしい……。

なぜ「アナタハン」の映像化はうまくいかないのか。R18で白石和彌さん版、園子温さん版、中島哲也さん版で見たかった。
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