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急げ!若者 TOMORROW NEVER WAITSのニューランドのレビュー・感想・評価

急げ!若者 TOMORROW NEVER WAITS(1974年製作の映画)
3.5
 ’70年代半ばから終盤に限ったような形になったが、個人的年間ベストテンに複数回、顔を出した監督たちがいる。長谷川和彦といった今のところ2本の長編しか発表してない作家は特別だが、関本郁夫·牧口雄二·小平裕、そしてこの小谷承靖。以降トリッキーな海外合作やアイドル映画のイロが付いてしまったが、我々にとっては『(加山から草刈)若大将』シリーズ、渡『ゴキブリ』シリーズ、そして’70年代何故か洋画·テレビと多かったツルゲーネフ『はつ恋』の決定版、の作者·牽引車だ。その小谷の初期作、部分的には観た気がするが、全編通しては初めて。アングル·色彩·静と動·内と外、バランス感覚·その結果の衒いない勢いに長けた作家で、本作の幻想·ヤクザと興行絡みの·ちと無理がある作を、風土や個人史の拡げ·引っ張りが補う以上に異次元に連れてってくれる。主要人物の途中退場とその穴埋めのテクニックより情感、というのは時折あるが、欠落を補充しての継続というのでなく、一夜限りの追悼·花向けでメンバーが当初ラインにそれぞれ細々と戻り、企画自体は、そっくりのコピー·というか本物まんまとしか見えない同名グループが次いでく流れが続き、現実のフォーリーブスを活かす事にもなり、活力や親しみあるマジックだ。小賢しさより、愛おしい感じ。この一見そう見えて、奇を衒わない素直な姿勢と、その敷き詰め努力の自然体がいい。
 孤児施設にいた頃からの、映画的夢想癖の、その施設初卒業組4人、バンドボーイから歌手へ、ファッションデザイナーの弟子、料理人卵、レーサーへGSから、の夢を紡ぎだし、歌手志望の1人の強い希望でレコーディングしていた曲がひょんな事から火が付き、4人でプロスカウト、大会場デビュー公演にまで進む。しかし、他の1人の盗られた店の金補填で、先の中心1人が、以前から目をつけられてた組に借りた義理生じてて、足抜けきれず·逆に金づると付き纏われ·断固拒否の軋轢で命を落とす。翌日の公演は···
 話が無茶でリアリティーないも、ズーム·手持ち揺れ以外のポジショニング·バランス(L全·部分寄り·どんでん·俯瞰め·仰角·ロー·横や縦移動·色彩と明るさ)がよく、ファンタジー·ユーモア張出しと、懸命泥臭さが上手く打ち消しあい心地いい。不吉な歌詞や展開もベタッとしない。演技力でいうと、柔軟さでもう郷ひろみの方が上手で、後塵を拝する先輩4人は逆に臭い芝居にも専念出来てく。スキだらけだが、埋める努力なんて端からしない。
 かわいいミニチュア·雪中の家、ライトもこまめ鮮やかなステージ、様々に発着機が斜線伸ばす空港、ホテルやそのプール、あからさまな変身メーク、現金入ったケースの間違われ運ばれ、血糊までしっかり用意の乱闘の極め方、全力疾走掛け値なし、今となってはむさ苦しい当時の髪型と身体の線見せつけ衣装、色んなカラフル·伸び伸びが作品を趣味越えて好ましい手触りいいものにしてく。
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