odyss

ある公爵夫人の生涯のodyssのレビュー・感想・評価

ある公爵夫人の生涯(2008年製作の映画)
3.8
【私が公爵なら】

見て少したつと、その間にこの映画の印象が少しずつ変わってきました。遅ればせの感想を書いておきます。

この映画を見ている間は、公爵夫人のきらびやかな衣裳や、広壮で豪華な邸宅の外観や内部装飾なんかに気を取られていました。実際、そこをまず見るべき映画だという意見は今でも変わりません。

だけど人間模様という点で見ると、公爵夫人や青年政治家の関係は、分かりやすいし共感しやすいけど、実は――こう言っちゃなんですが――ありきたりというか、ありがちなんですよね。

むしろレイフ・ファインズ演じる公爵が、見てしばらくしてからだんだんに重みを増してくるのです。単刀直入に言って、私が仮に公爵なら、やっぱりああいうふうにするだろうと思いますね。

男は微妙なものです。一方で公的な立場で役割を果たさなければならない。他方で奥方との関係がありますが、この時代の奥方との関係は基本的にやはり公的なものであり、いわゆる愛情関係とは違っているだろうと思う。たとえ奥方がキーラ・ナイトレイみたいな美女であったとしても、いかに情愛の深い性質であったとしても、その関係が公的である以上、別に女が必要になるのです。

・・・てなことを書くと世の女性から総スカンを食らうかもしれませんけど、繰り返しますが、私が公爵ならやはり愛人を作ります。愛人は必ずしも奥方みたいな名門の出でなくてもいいし、美人ですらなくてもいい。要するにプライヴェートな関係であればいいのです。そうでないと息がつまってしまう。

しかし、そうした愛人を作ることに、男はむろんやましさを覚えます。必要なんだけど、後ろめたい。かくて男の行動や発言はきわめて分かりずらくなる。男の生理を言葉で説明するのは難しいからです。

この映画は公爵夫人の悲劇を扱っていますが、同時に公爵の悲劇をも扱っている。「あんな好き勝手やって、どこが悲劇なの?」とおっしゃる女性は、永遠に男が分からないままでありましょう。
odyss

odyss