いろどり

ドン・ジョヴァンニ 天才劇作家とモーツァルトの出会いのいろどりのレビュー・感想・評価

3.5
オペラ「ドン・ジョバンニ」ができるまでを、劇作家ダポンテの半生を通して描いている。曲をつけたモーツァルト、仕事の世話をしたカサノバやサリエリなど当時の偉人が次々出てくる。「アマデウス」ではモーツァルトに嫉妬していたサリエリ。今作ではモーツァルトに協力的で、史実にそった内容となっている。

性豪として名高いカサノバも、政治や文化に携わる知識人として描かれている。台頭しつつある啓蒙思想を意識し、ダポンテをサリエリ、モーツァルトとつなぐ橋渡しをするなど、外交官、文化人として一目置かれた存在感を発揮、恐らくこちらも史実に近いのだと思う。

モーツァルトの気分で見始めたら冒頭からいきなりヴィヴァルディが流れふいをつかれる。ヴェネチアつながりということかな。その後もかかるヴィヴァルディが私のモーツァルト気分に波風をたてる。

今作の見どころの1つでもある撮影巨匠ヴィットリオ・ストラーロの映像。今回はミレーの絵画を思わせる美しさがあった。舞台劇のような見せ方が特徴的。白く、大きく、中世の絵が施されたチェンバロが素敵だった。

「ドン・ジョバンニ」は希代の色事師ドン・ファンを基にした話で、実際のダポンテも同じように色事師。ダポンテの好色と物語上のドン・ジョバンニの好色を重ね合わせたストーリーは笑えるところが多い。

ダポンテが心を寄せる女性に対して、ダポンテと同棲しているオペラ歌手が、ダポンテの歴代彼女遍歴が書かれた紙を渡して仲を引き裂こうとすると、劇中オペラでもドン・ジョバンニが華麗なる女性遍歴を歌っていたり、よく練られた脚本だった。

モーツァルトの愛妻コンスタンツェがドン・ジョバンニを、「ブタ並みに発情した色事師」と言っていたのには笑ってしまう。

劇中オペラでドン・ジョバンニが女性の体をベタベタさわりながら歌っている。このような演出が、娯楽のなかった当時の庶民には受けたのかもしれない。
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