カルダモン

マジック・ランタン・サイクルのカルダモンのレビュー・感想・評価

4.3
2023年5月に96歳で亡くなられたケネス・アンガーの短編10本オムニバス。ずっと観たかった映像集だったけどHDリマスター盤を気軽に購入する度胸も金もなく。そんな折にU-NEXTで配信されて渡りに舟とばかりにプレイリストに放り込んだものの、いざいつでも観られる環境になってしまうと途端に観るタイミングというものを見失ってしまう配信あるある。そこで、ふとした思いつきから寝る直前に観たら変な夢がみられるかもという期待を込めて一日一本ずつ寝る前に鑑賞開始、残念ながら効果はなかった。

アンダーグラウンドでカルトな映像作家というボンヤリとした認識で若干構えて見始めたのだが、思ったよりもビジュアルが楽しくて意味不明ながら面白く観れた。

以下収録作品
※チャプター順は時系列に並んでない

1947年『花火』
1949年『プース・モーメント』
1971年『ラビッツ・ムーン(完成ver.)』
1980年『人造の水』
1953年『快楽殿の創造』
1963年『スコピオ・ライジング』
1965年『K.K.K. Kustom Kar Kommandos』
1969年『我が悪魔の兄弟の呪文』
1950年『ラビッツ・ムーン(未完成ver.)』
1980年『ルシファー・ライジング』


どの作品もセリフやナレーションといった言葉による説明はなく、ひたすらにビジュアルのみイマジネーションが炸裂する様を焼き付ける。その実バラエティは豊かで、白黒もあればカラーもあるし、3分で終わるものもあれば30分の作品もある。そしてどの作品も楽曲使いのセンスが飛び抜けていて、それが楽しい。

どのような映像なのか表すのは難しいのだけど、前後のない断片的な物語=夢の中を歩くような感覚だろうか。チンコ花火やパントマイム、ハリウッドバビロンから古代エジプトまで。ツヤツヤに光るバイクに跨るゲイ、幻想的な噴水公園の美しさなど。青年期から中年期に渡るケネス・アンガーの映像マジックに触れるうちに、イメージを具現化する愉しさが伝わってくる。名だたるアーティストやクリエイターへの影響は純粋にこのような映像遊びに刺激を受けたに違いない。

私が好きだったのは『快楽殿の創造』、『人造の水』、『ルシファー・ライジング』