佐藤克巳

母と子の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

母と子(1938年製作の映画)
5.0
五所平之助の門弟らしい渋谷実監督の社会風刺鋭い家庭劇の傑作だが、五所のユーモアや暖かみ迄削ぎ落とした非情で残酷さすら感じさせる結末。躍進するやり手専務河村黎吉を慕い疑う事を知らない妾母吉川満子と、本家跡取り息子の処遇を受けながら金だけしか信用できず放蕩三昧に堕した長男徳大寺伸、母の信任を受け唯一同居し純粋培養で育った長女田中絹代。その父河村は、妾一家の厄介払いを思い立ち、茅ヶ崎別荘に吉川と田中を引っ越させ、実直な社員佐分利信を宛行、田中と佐分利の縁談を進める。苦労人佐分利は、出世の足掛かりを掴んだと有頂天となり、社内でも下宿先でも横柄な態度を見せ始める。田中は、佐分利の下宿を訪れ、ハンカチを引き伸ばして干す気遣いをする食堂娘水戸光子と布団の打ち直しを手伝うが、下宿屋老婆高松栄子から水戸が許婚だと知らされる。茅ヶ崎では最愛の母が亡くなり、佐分利が母に触れるのも拒否し、一人泣いた。
佐藤克巳

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