三四郎

母と子の三四郎のレビュー・感想・評価

母と子(1938年製作の映画)
3.2
渋谷実監督の出世作と評価されている作品。
渋谷実監督と言えばブラックユーモア作品のイメージだが、こうした大船調ホームドラマの方が、個人的には好きだ。

専務に叱られ凹んでいる佐分利信。
「もう人にペコペコ頭下げるの嫌になったよ」会社を辞めたいと言う佐分利信に定食屋の娘で恋人?の水戸光子は、誰だって働いていれば嫌なことくらいあると諭す。しかし佐分利信は、それでも辞めると言い、ここ(定食屋)で働こうかなと言う。「それ本気?私、それでもいいのよ」と上目遣いの水戸光子。なんかエロチック。
この作品は、佐分利信と水戸光子のラブシーンが、当時の日本映画にしてはかなり濃厚に思える。二人の表情が良いのか、キャメラの迫り方、切り返しが良いのか、全てにおいて演出が巧いのか!

妾と妾の娘、この世に信じられるのは二人きり…と、娘は知ってしまった。
父親は二号さんに飽きて新しい女を囲っているし、兄貴(徳大寺伸)も女中を囲って夜遊びしているし、佐分利信は恋人がいるにもかかわらず出世を狙い、逆玉の輿を掴もうとしているし、なんとも自分勝手な男たち。
何歳になっても無邪気な妾の母は、お人好しすぎて、人を信じすぎるが、お店(今で言うナイトクラブ?)を出している妹の方は、世間を知っているからか、すぐには人を信用せず疑ってかかり、しかもそれが当たっている。

引越し準備の時のお蕎麦が短くて気になってしまった。箸でつまんで一口で食べられるお蕎麦って…。当時はこれが普通だったのか、それとも科白があるから、食べやすく、かつ話しやすいように故意に短いお蕎麦にしたのか…。

終幕が唐突のような気がしたが、これで良かったのかしら。
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