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延安の娘のnatalieのレビュー・感想・評価

延安の娘(2002年製作の映画)
4.7
文化大革命時代の下放政策のもと、下放青年との間に生まれた娘は、延安の養父母のもとで育てられた。娘は北京にいる実の父母を探して会いに行く。

時代に翻弄された下放青年、その子供の物語。

寡黙で大人しく、周りの様子を伺う海霞の様子は彼女がどう生きてきたかを物語っている。養父母は、産みの父母が延安に来るべきだと、海霞の北京行きを許さない。
最初は彼らと同じ通りに、父母に来て欲しいと望む彼女だが、父母は別れており産んだことを隠して生きてきているのであり、来られるような状況ではない。
育ての親との縁を切ってでも会いたいと話す彼女。
気にかけてくれる人が欲しい、と心のうちを話す。

農村の生活で日に焼け、年寄り老けて見える海霞、ついに父親と再会するが、父親はシャツすら着ないまま娘を迎え入れる。父親の再婚相手は夫に娘がいることを初めて知り最初は泣いていたが、彼女にネックレスをつけてやる。

昔のことは忘れようよ
殴って仕舞えば楽になるのに
お前は若い頃の俺にそっくりだ
だって娘でしょ

北京に来た娘のために有志にカンパを募る。同期との会食で、下放の話をする父親は、仲間には今更瘡蓋になったものを蒸し返すなといわれる。
このまま埋もれてしまえというのか。

一方で母親は娘に会わないという。

この再会をなんとか実現させたのは、黄王嶺の存在があったからだ。彼は同期との恋愛で子供を中絶で失っており、海霞の背中を押した。同期の王偉は、家庭があったにも関わらず強姦したと罪を着せられ、10年服役したが、本当は無罪であったと知り、その罪を着せた当時の上官にあってほしいと頼んでいた。彼自身も、その上官から、人間ではなく畜生だと暴言を吐かれた、心の傷があった。

上官に会いにいくが、結局真相を吐かせるまでには至らなかった。それは彼が、上官が下放の任務の際に幼い我が子をおいていき、注射の副作用で耳が聞こえなくなってしまったと最初に話したのを聞き、彼もひとりの人間であったのだと同情したからだった。

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すごい、こんなのどうやったら撮れるんだろう。実は主人公は黄王嶺で、歴史に埋もれようとしている下放青年たちの物語を突き動かしていく。
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映画を作ることは盛大なお節介。隣の人がどう生きてきたかを今の日本人が気にしないでいるのも事実。


黄土高原、人間の郷をとっている中で、その険しい景色も自然と人間が対峙して生まれた景色だと感じたから
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