シズヲ

コーヒー&シガレッツのシズヲのレビュー・感想・評価

コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)
3.5
“コーヒーと煙草”を挟んで繰り広げられる他愛もない遣り取り。幾つものショートストーリーによって構成された短編オムニバス。思わぬ役者陣のアンサンブルによって繰り広げられる掛け合いは、飄々としながらも何処か洒落たムードに溢れている。ケイト・ブランシェットの一人二役やウータン・クラン×ビル・マーレイなど、奇妙な組み合わせのやりとりにフフってなる。

掴みどころも繋がりもない短編が続くけれど、それぞれ独立したパートが特定のワードやテーマで何故か結び付いていくのが印象深い。個々の話はいずれも“コーヒーと煙草を挟んだ座席”という限定されたシチュエーションで描かれるけど、セットの内装に工夫を凝らして絵的な魅力を保ち続けているのが良い。モノクロの映像も雰囲気を際立たせてて趣がある。

とはいえ全体的に楽屋芸っぽさがあるというか、ユーモアの土台において役者自体のキャラに大きく依存している感はあった。そのうえで全編に渡って取り留めのない会話劇が続くので、作風に乗り切れない部分は否めなかった。ジャームッシュの作品はツボに嵌まるやつとそうでないやつがあるけど、本作は後者だった。

そんなこんな言いつつも不思議なムードの漂う会話劇の末に訪れたほんのり寂しげなラスト、何だかんだで余韻を感じてしまったので憎めない味わいがある。
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