ヨシイコウタ

コーヒー&シガレッツのヨシイコウタのレビュー・感想・評価

コーヒー&シガレッツ(2003年製作の映画)
3.8
とても面白かったです。本編のみならず収録されている特典映像まで全部面白いので、借りられたらそちらもぜひ観てほしいです。

まず監督も言っていましたが、キャスティングが非常にユニークでした。彼らが画面に映っているだけで面白い。何人ものミュージシャンたちが俳優になって、自分自身を演じている(すべてがそうというわけではありません)というのは観てるだけで楽しくなってくるものです。知っているアーティストが多かったのもあってか、ものすごく興味をかきたてられました。ミュージシャンだけではなく、有名どころの俳優女優もたくさん出てくるので飽きることなく観られます。ケイト・ブランシェットの出ている話は、特に一見の価値ありだと思います。女優としての才が存分に発揮された作品だと思います。個人的には、ビル・マーレイとテイラー・ミードもとてもチャーミングで良かった。

つい先程レビューを載せた『Somewhere』もそうですが、この作品にもこれといった起伏はありません。ほとんどが、ただだらだらとコーヒーとタバコを嗜みながらとりとめのない会話を交わすだけです。なので「そんなのつまらないや」とばっさり切り捨ててしまう方もいるかと思いますが、あえてそういう日常のワンシーンをすくい上げて作品にするということには、大いなる意味があるのではないかなと僕は思います。誰しも今過ごしている日々がなんとなく退屈で、何も成長していないような気がして、鬱屈した気分になったりすることがあるかと思います。かといってどうしたらいいのかも分からず、何かに手をつけてみても、手応えを得られない……みたいなときに、こういう映画に出会えれば、ほんの少しだけだとしてもきっといくらか楽になれる。時間の無駄のように思えていた時間が、ユーモアを帯びた色味のある時間に思えてきたりする。ひとつの作品になりうる日々を生きているんだと、少しだけ前向きになれたりする。そういう意味で、こういう作品がこれからも大切にされていけばいいなと思います。